深夜、100人分の台本を数時間で印刷するドラマ現場

――面白かったのはどんなところですか。

斉藤 例えば『マツコの知らない世界』ではタイトル通り、そして僕の狙い通り、いろんな世界が見られました。

 研修で入ったドラマ『陸王』は『半沢直樹』を手がけた福澤克雄さんの班で作っていた日曜劇場。ドラマ視聴率ナンバーワンを取る最前線のチームに入れて、現場を見られたっていうのもすごい楽しかったし「ドラマってこうやって撮るんだ」とか「前準備がこんな大変なんだ」とか、稀有な体験ができたっていう意味で、めちゃくちゃ良かったです。

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 でもどちらも体力勝負な部分があって、『陸王』のマラソンのロケのときは3日間連続で「2時寝で4時起き」みたいな時期があったり、バラエティでも「1週間帰れない」とか。そういう体力的な辛さはありましたね。

――すごく大変そうですが、具体的にはどういう業務になるんですか?

斉藤 ドラマって、ADの中でもチーフ、セカンド、サード、フォースと役職が分かれていて。社員が全部やるわけじゃなく、制作会社の方と協力してやるから、かなりの大所帯。そこで僕はADのフォース、もうあらゆる雑用係です。

©︎文藝春秋

 一番大変だったのは、割本(わりぼん)の印刷。台本の最終稿が上がってきたら、その日に撮影する部分を抜き出して1冊の本にまとめる。で、その本を朝、バーっと全員に配るから、100冊くらい印刷するんです。監督が悩んで、ト書きとか、カットのどこを撮るかとか、指示を書いているのを待って印刷を始めるから、タイミングが撮影当日の朝1時とか2時になる。

 それで4時5時にはロケに出発するから、それまでに100ページくらいある割本を100部、コピー機2台使って印刷する。ちょっとでも抜け・漏れがあったり、途中で「これ差し替えておいて」なんて言われたら、印刷し直しになります。

 そういう深夜の作業があったうえで、ロケ現場ではモノをはけたり搬入したり、バミったりとか。

「ドラマが短距離走で、バラエティが長距離走」の苦労と喜び

――そうするとドラマの現場の方が大変ですか?

斉藤 よく言うのが「ドラマが短距離走で、バラエティが長距離走」。それぞれの大変さがあります。

――バラエティの「長距離走」というのはどういう大変さですか?

斉藤 終わりがないんです。1シャープ(シャープ:放送回数の単位)だいたい2カ月くらいかけてリサーチして、取材して、最後にスタジオ撮影して、ハコ(編集所)入って編集して、オンエアまでやる。でもそのオンエアが終わる前に次のリサーチや取材が始まるから、繋がっていて、終わりがない。

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 ハコに入ってるときとかは、テロップの指示だったり、修正指示だったり、オンエア前の細かい作業だったりで、1人ハコヅメになって1週間帰れないなんてこともある。そういうのが、体力面でやっぱりつらかった。