1986年のオーストラリアで起きた「ムーアハウス連続殺人事件」。女性4人が犠牲となったこの事件は、ある若い女性の逃走によって表沙汰になる。夫婦はなぜ犯行を重ね、どのように追い詰められていったのか。文庫『世界の殺人カップル』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/続きを読む)
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警察に捕まるぐらいなら⋯
デヴィッドは彼女と応対するうちに欲望を抑えきれなくなり、ナイフで脅して強姦。キャサリンはそれを一切止めることなく、淡々と眺めていた。さて、この後どうするか。メアリーを解放すれば、警察に捕まるのは明らか。
ならば、採る手段は一つしかない。2人は車でメアリーを近所の森まで運び、デヴィッドが再び強姦。必死に命乞いをする彼女を無視しナイロンテープで首を絞めて殺害した後、手足を切断し、遺体を地中に埋めた。
2人目の犠牲者
味をしめたデヴィッドはキャサリンに命じて次の獲物を探す。2人は事前に取り決めたサインがあった。キャサリンがターゲットになりそうな女性を見つけると「お腹が減ってきたわ」と口にし、デヴィッドが気に入り「そうだな」と答えると相手が確定。こうして、2人は毎日のように車を走らせ、10月20日、通りを歩く1人の少女に狙いを定めた。当時15歳の女子高校生スザンヌ・キャンディで、聞けば、レストランでのアルバイトを終え自宅に帰る途中だという。
家まで送ってあげるという彼らの言葉に、スザンヌは感謝し車に同乗した。人の良さそうな男女カップルに危険な雰囲気はまるで感じられなかった。ところが、彼女もまた夫婦の自宅に連れ込まれ、デヴィッドに凌辱の限りを尽くされる。スザンヌはデヴィッドの特に好きなタイプだったようで、数日にわたってレイプを繰り返した。その姿を見て、キャサリンが怒る。嫉妬だった。
