――たしかに、改造車を見下す風潮はあるかもしれません。「車高の低さは知能の低さ」というネットスラングもありますし。
A氏 そうなんですよ。車を弄っているというだけで、一様にその人の人格まで切り捨ててもいいような空気を感じたんです。
――現実はそうではない、と。
A氏 もちろん改造車の暴走行為や検挙についての報道も事実ではありますが、それはあくまで表層に見えている一部分なんですよね。
実際にイベントやミーティングの場に行ってみると、皆さん非常に気さくで、それぞれ自分なりの考えをもって、普通に交流を楽しんでいる。
そういった出会いの可能性を最初から切り捨ててしまうのは、もったいないように思えたんです。
――もったいない、というと?
A氏 もうずいぶん前から「若者の車離れ」が叫ばれていますが、まだまだ車のカスタムに興味をもってくれる可能性のある人たちもいるはずなんです。そうして入り口に立とうとしている人たちが、「この界隈は怖そうだし」と、実際の雰囲気を知らないまま終わってしまうのは残念だなと。
――それで、SNSを活用しているわけですね。車弄りの楽しい側面を伝えようと。
A氏 ええ、とくにTikTokですね。ショートムービーであれば、人の表情や現場の雰囲気をありのまま伝えられるので。「あ、この人こんな表情するんだ」とか、そういうふとした瞬間の積み重ねからイメージも変わっていくのではないかな、と。
「若者の改造車チーム」は珍しい?
――お話を聞いていると、車弄りの楽しみ方もかつてとは変わってきている印象を受けます。メンバーの方はやはり若い方が多いのでしょうか。
A氏 私が33歳で、メンバーのなかでは最年長になります。一番下が26歳ですね。
――ちょうど、「若者の車離れ」といわれてきた世代かと思います。同年代のチームは珍しいのでは?
A氏 そうですね、お金のかかる趣味ですし、イベント会場で目立つ車のオーナーさんはもう少し年配の方が多いように思います。人数で見ても、30代以下は少数派かなと。
ただSNSを見ていると、我々よりも若い人たちのチームも普通にあるんですよね。イベントでも、同世代や下の世代のオーナーと交流する機会はありますし。
――20代や30代では、趣味におけるSNSの比重も大きくなっていそうですね。
A氏 ええ、実は匿名集団のメンバーも、SNSをきっかけにつながっていったんですよ。
――おぉ、そこも現代的ですね。地元の友人、とかではないと。
A氏 私自身、数年前に関西から関東に引っ越してきて、ほとんどゼロから関係を作らなければならなくて。SNSを通じて開催されるミーティングなんかをきっかけに、気のあう人たちで集まっていった感じですね。

