メディアが移民に対する否定的な態度を醸成

 日本人は、外国人による犯罪率を実際の値よりも大幅に高く見積もっているということを指している。外国人が増えると治安が悪化する、と発言する人が増えたり、政府が「違法外国人ゼロ」というスローガンを掲げたりしているが、その背景にはこうした過剰な見積もりがあるのかもしれない。

 外国人が罪を犯すというストーリーを形成する際に、メディアが果たしている役割は無視できない。テレビや新聞をはじめとしたメディアは、容疑者が外国人の場合はいまだに国籍を報道しているが、日本国籍の場合には特に触れたりはしない。こうした報道は、移民に対する否定的な態度を醸成することに明確に一役買っている。たとえばドイツでは、仮にドイツ国籍であっても容疑者の国籍を常に報道するようになり、その結果人々の移民に対する否定的な態度が緩和した(※2)。テレビや新聞といった日々目にする情報源が外国籍と犯罪と国籍とを継続的に結びつけることで、人々が外国人に対して否定的な感情を抱くようになるのである。

正しい情報を継続的に伝えることの重要性

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 筆者が行った先ほどの実験には続きがある。筆者の実験は、人々が統計情報でなく、想像や印象に基づいて、外国人による犯罪に関する「知識」を形成しているということを示唆する。それではこうした回答者に、実態を教えるとどうなるだろうか。結論からいうと、正しい情報を提示されると、その情報に基づいた「知識」を形成することがわかった。外国人による犯罪率を尋ねた後、ランダムに選ばれた一部の回答者に対し、外国人犯罪率が5%であるという正しい統計情報を提示し、その半年後に再度同じ回答者に対して、外国人犯罪率を尋ねた。結果、正しい情報を提示された群は、そうでない群と比べ、外国人犯罪率を大幅に低く回答する傾向にあった。ここから、正しい知識を与えられた群は適切にその情報を処理し、仮に半年経っていたとしても、誤解に基づいた犯罪率推計をしなくなるといえる。正しい情報を継続的に伝えることの重要性がここからわかるだろう。