「外国人は不起訴になりやすい」という誤情報
自民党総裁選で高市早苗が、通訳が確保できないために外国籍の容疑者が起訴されないことがよくある、という趣旨の発言をしていた。この発言は実態と異なっているのだが(毎日新聞 2025年9月26日)、ネット上では外国人であるために不起訴になりやすいという誤った言説が広がっていた。しばしば外国籍の容疑者が不起訴処分となったというweb記事が流れてくるため、こうしたニュースを目にした人々の乱暴な推論だろう。しかしながら、『令和6年版 犯罪白書』をみてみると、外国人の起訴率は41.6%であり、日本人を含めた全体の起訴率(39.6%)よりも若干高い。
そもそも、罪を犯す人の国籍が日本のものであっても外国のものであっても同様に対応されるべきもので、外国人の犯罪を殊更厳しく糾弾したり罰することは、明確な差別である。それでは、裁判において国籍に関わりなく判決が下されているのだろうか。公平であるべき裁判だが、海外の研究の多くは外国籍の被告に対して有罪判決が下される確率が高く、懲役など罰則がより重いということを示している(※3)。この傾向は、犯罪の種類や前科などの判決に影響を与えそうな特徴の影響を制御した上でのものである。残念ながら日本の研究は見つからないため、日本に関する傾向については言及できないものの、自身を裁判員と見立てて判決をしてもらうという実験では、外国人に対して否定的な感情をもっている人の間で判決がより厳しくなった(※4)。
冒頭にも述べたように、自身の実感が常に正しいわけではない。しかしながら人はしばしば実感や耳目を引くストーリーに基づいて判断をしてしまう。特に外国人や犯罪といった人々が敏感に反応する事柄については尚更だろう。センセーショナルな話題こそ、実感ではなくデータや過去の研究に基づいて考えることが求められる。
※1 Igarashi, Morita, & Ono, 2024
※2 Keita, Renault, & Valette, 2024
※3 Choi, Harris, & Shen-Bayh, 2022; Hou & Truex, 2022; Light, 2016; Light & Wermink, 2021; Shayo & Zussman, 2011
※4 Igarashi, Morita, & Ono, 2025
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このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2026年の論点100』に掲載されています。



