キノコ嫌いの広岡「あんな偏食家はいません」

『がんばれ!!タブチくん!!』で描かれていた「ヒロオカ監督」について、「実際の父とはまったく異なる性格」と祥子さんは言った。では、自宅での広岡はどんな性格であり、どんな父親なのだろう?

「あのマンガのように、家では着物なんか着ていませんよ。普段は麦わら帽子をかぶって、ランニングに短パン姿で庭作業をしています。いつもオナラばかりしていて母に怒られていましたし、世間からは管理野球と言われていて食生活にはうるさかったけど、私や弟から言わせれば、あんな偏食家はいません。特にキノコ類が苦手で、私たちには“あんなのは栄養が何もない”と言っていました。でも、後にそうではないことを知って、“あぁ、パパも嘘をつくんだ”と思ったことを覚えています」

 パブリックイメージが覆される発言は、やはり家族ならではのものだ。隣の部屋でテレビを見ている広岡の若き日の姿が頭に浮かぶ。祥子さんはさらに続ける。

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広岡達朗さん

「あえてヒールのようにふるまった」父への敬意

「スポーツ新聞などを読むと、父は完全なヒールですよね。いつも長嶋さんやジャイアンツに対する敵役として描かれています。だから、ジャイアンツと優勝争いをしていたときなど、よく自宅に変な電話がかかってきました。電話に出ても、“今年は巨人が優勝だよ”とひと言だけでガチャンと切られたこともあったし、“お宅のおてんば娘、外を出歩くときには気をつけた方がいいぞ”と言われたこともありました。《おてんば娘》って、間違いなく私のことですよね」

 当時の選手名鑑には、自宅住所や電話番号、家族構成が掲載されているのは当たり前のことだった。それでも、祥子さんの口調は明るい。

「でも、それは仕方のないことですよね。やっぱり、ジャイアンツは人気がすごかったし、長嶋さんや王さんは絶対的な人気者でしたから。だから父も、少しでもヤクルトのことを取り上げてもらえるように、あえてヒールのようにふるまったのだと思うし、スポーツ紙の記者さんたちも、自分の原稿が大きく掲載されるように、父を悪者にして記事を書いていたんだと思います。それはお互いに仕事として割り切っていたんだと思います」

 父への愛情、そして敬意がよく伝わってくるやり取りが続いた。

<続きは書籍でお楽しみください>

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