12月5日、茨城県・宍戸ヒルズカントリークラブ。「ファイナルQT(予選会)」を18位で完走して見事に来季前半戦の出場権を獲得した横峯さくら(39)の隣には、キャディで夫の森川陽太郎(44)の姿があった。しかし、ここ1年の2人の“関係性”は激変の連続だった。

 通算23勝、2009年には賞金女王にも輝いた横峯が、森川氏と結婚したのは11年前のこと。のちにキャディも任せるようになった夫に一度は「ゴルフの権限を100%渡す」という異例の決断をしたものの、その後「やはりゴルフは自分で決めるしかない」と考えを180度変えたという。

 選手とキャディ、妻と夫、2人の間に一体何があったのか――。

ADVERTISEMENT

横峯さくらさんと夫の森川陽太郎さん ©文藝春秋 撮影・志水隆

 横峯はここ数年、キャディを務める夫の森川氏と共に全国を転戦するツアー生活を続けている。国内は北海道と沖縄を除きほぼすべて車移動で、4歳になる長男も基本的には一緒だ。 つまり2人は24時間365日、生活も仕事も共にする夫婦である。そんな“密着生活”が円満に回る理由は、横峯の「生活に対するスタンス」にある。

 横峯は家の中のことに関してほとんどこだわりを持たず、森川氏が決めたことを追認するような関係ができあがっていた。

「もともと私は、自分で計画を立てたりするのが得意なタイプじゃないんです。家のことも基本的には夫が決めてくれて『うん、わかった』という感じですから」(横峯)

 生活においては夫が主導権を握り、妻はそれに身を委ねる。この「判断を任せる」という形が、横峯にとって最も心地よいバランスとして成立していたのだ。

©時事通信社

「自分の領域」と思っていたゴルフについて「権限を100%渡してほしい」と言われ…

 だが、ゴルフとなると話は別だった。

 生活にはこだわりがなかった横峯も、「ゴルフだけは自分の領域」という責任感があったという。しかしここ数年は成績が低迷し、見かねた夫から今年の夏ついに「1回ゴルフの権限を100%渡してほしい」と提案された。生活での「夫に任せる」というやり方をゴルフにも適用しようと試みた。

 クラブ選びからマネジメントまで、権限を100%夫に委譲する。ドラマ『グランメゾン東京』にちなんで「ウィ、シェフ」を合言葉に、夫の指示に徹底的に従うことを決めた。当時の横峯は「権限を手放して本当に楽になった」「私はもともと言われたことをする方が得意なタイプ」と心から納得しているように見えた。直後の「北海道meijiカップ」でも9位タイに入るなど手応えはあった。

 しかし、ほどなくして夫婦の間に不協和音が響き始める。