こうした懸念を裏付けるように、トランプ政権の「国家防衛戦略」は、対中抑止よりも米本土防衛や米国に近い西半球を優先する内容になっていると米メディアは報じている。実際、米軍は不法移民対策などで南部の国境地帯に数千人規模で派遣されているほか、中南米周辺での麻薬取り締まりにも投入されている。

 仮に今後、米国のインド太平洋への関与がこれまでより弱まるシナリオが顕在化すれば、日本がより大きな役割と負担を求められることも想定されてくる。

中国を警戒していればよい時代は終わった

 さらに米国ファースト政策はトランプ関税に見られるように、米国の国益実現のためには同盟国に対しても圧力や要求を突きつけることも厭わない強硬姿勢を含んでおり、対米依存が逆手に取られて要求実現のための武器として使われかねない「米国リスク」を惹起させている。

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 たとえばAIやクラウド、データセキュリティ、量子暗号技術といった国家の産業競争力や安全保障を左右する先端技術の分野でも、経済安保の文脈ではすでに、中国に依存するリスクだけでなく、米国に依存するリスクを踏まえ、日本政府内で戦略的自律性の確保のための国産技術の育成、活用が議論され始めている。

 米国と協調し、中国リスクに備えていれば概ね外すことはない時代は終わりを告げた。今後は米国を補完しながら同盟を強化させて米国の関与を引き出す一方で、日本の戦略的自律性が損なわれないため「米国リスク」に対するヘッジもする、多元方程式になっていくだろう。日本は「中国」「米国」という変数の狭間で、自分の頭でリスクと機会を見極め、先端技術も活用し国益と戦略的自律性を確保しなければならなくなったのである。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2026年の論点100』に掲載されています。

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