指揮統制、ミサイルの共同生産などはこの数年間の日米同盟による取り組みのごく一部の代表例に過ぎないが、これらはいずれも実戦での作戦運用能力の強化に主眼を置いていることが共通している。
日米は実動を想定したリアルな脅威認識を背景に抑止力を高める努力をすることで、中国に対して「台湾侵攻は割に合わないぞ」というシグナルを送って抑止しようとし、仮に抑止が破綻した際は中国の目標達成を阻止できる対処能力を高めようとしているのである。
親善や交流、士気高揚といった儀礼的、象徴的な取り組みではなく、有事を見据えた実践的な取り組みがこの数年、急ピッチでおこなわれてきたことはそれだけ日米の台湾有事の抑止に対する温度感の高さを示している。
8310億ドル≒120兆円の大計画の裏で、日本への関心は低下か
だが、ここ数年の抑止力、対処能力の強化の流れを逆回転させかねない動きが出てきている。トランプ政権による「米国ファースト」政策である。
その象徴は、トランプ大統領が打ち出した米本土防衛のための次世代ミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム(Golden Dome for America)」だ。迎撃が困難とされる極超音速ミサイルや大量のドローンによる攻撃といった空からの新たな脅威から米本土を守ることを目的とする。念頭にあるのは中国とロシアからの脅威で、システムの中核は宇宙配備型のセンサーや迎撃システムとなる。費用は総額で1750億ドル(トランプ大統領)とも8310億ドル(米議会予算局)にのぼるとも言われ、アポロ計画に並ぶ国家的プロジェクトとして注目されている。
これだけ莫大な予算をかけようとしているということはいかに今の米国にとって米本土防衛の政治的、軍事的優先度が高いかを示している。
米国のリソース配分が本土防衛に向けられれば、それだけインド太平洋や欧州正面へのリソース配分が相対的に低下することが懸念される。この防衛構想は今の米国が予算配分でも政治的関心でも本土防衛を優先、つまり米国ファースト志向になっていることを象徴しているといえる。これは米国の政治的関心や軍事的関与をインド太平洋に引き留めておきたい日本にとっては警戒すべき動きだ。



