俳優、モデル、さらにアニメやゲームが好きな“オタクタレント”のパイオニアとして活躍した加藤夏希さん。現在は妊娠・出産を経て俳優としての活動を再開している彼女に、大人びた子役時代の思い出から、4児の母となった現在の私生活まで、ライターの徳重龍徳氏が詳しく聞いた。

加藤夏希さん ©山元茂樹/文藝春秋

「兄にゲームで勝ちたい」という理由で芸能界入り

 当時小学5年生だった加藤さんが芸能界デビューしたきっかけは、ほかの多くのタレントとは一線を画す意外なものだった。

「兄にゲームで勝ちたかったのがきっかけです(笑)。当時『首都高バトル』というレースゲームがあったんですけど、なかなか兄に勝てなくて。今みたいにSNSもないですし、お小遣いで攻略本を買うのも難しい。そんな時にゲームを作った会社『元気』がキャンペーンガールを募集していて『これに出ればゲームを作っている人に会える』と」

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 そこで地元・秋田から東京へ出てオーディションに参加した加藤さんだったが、ほかの参加者は「グラマラスな外国の方ばかり」だった。そんな中、ゼッケン付きのスクール水着で審査員を驚かせながらもグランプリを受賞したが、本来の目的であった『首都高バトル』の担当者には会えず仕舞いだったという。

 その後、『燃えろ!!ロボコン』をきっかけに俳優デビュー。しかし、年齢に似合わない大人びた外見で身長も164cmほどあったため、年齢相応の役はあまりオーディションに受からなかった。ランドセルを背負っている姿に驚かれることもあった。『ロボコン』のロビーナ役をはじめ、お化けやアンドロイドなど“普通の人間”ではない役ばかり演じていたのは、そのためだ。

「未成年なのに、ビールのキャンペーンガールのオファーをいただいたこともあって『えっ、未成年なんですけど、ソフトドリンクじゃないんですか?』となりました(笑)」

©山元茂樹/文藝春秋

結婚の決め手は『ドラクエX』お相手は武道家だった

 ゲームがきっかけで芸能界でのキャリアをスタートさせた加藤さん。私生活の転機にもやはりゲームが大きく関わっている。夫になる男性は「元ゲーム仲間」だった。仲が深まったのはなんと『ドラクエX』プレイを通してだ。

「彼が使うキャラは武闘家で、私は僧侶だったんです。『ドラクエX』って装備が重ければ、ボスを抑え込めるんですよ。そういうタンク役を夫はしていて、その姿がかっこよくて、『ええ、私のために大変な思いを』と思っちゃって(笑)」

 同棲開始後も別々の部屋で一緒にオンラインゲームの日々。新婚旅行でハワイに行っても、ずっとゲームの話ばかりしていたという。ゲームへの愛で強く結ばれた2人のプロポーズも独特だ。

「2人で2月に滝行へ行ったんですよ。滝に打たれながら『結婚してください』『私をお嫁にしてください』とプロポーズをして。その様子を動画に撮って、結婚式の時に映像を流したんです。ドラクエ風にして『2人の旅が始まる』とテロップを流したら、親族はみんな『え~』ってなってました(苦笑)」

©山元茂樹/文藝春秋

 もちろん、現在では4人の子供たちも一緒にゲームをしているそうだ。「兄にゲームで勝ちたい」という純粋な思いから始まった加藤さんの芸能人生は、ゲームへの強い情熱とともにこれからも続いていく。

<つづく>

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