毎年のように、箱根駅伝のエース区間「花の2区」の区間記録を更新するケニア人留学生。正月のテレビ画面越しに、彼らの活躍を見続けてきた私たちだが、彼らがケニアではどういう暮らしをしていて、どうやって日本に来て、そして卒業後に何をしているのかについては知らないことばかりだ。
ここでは、そんなケニア人留学生の謎を追ってアフリカの大地を訪ね歩いたノンフィクションライター・泉秀一氏の著書『アフリカから来たランナーたち 箱根駅伝のケニア人留学生』(文春新書)より一部を抜粋。2025年に箱根2区で区間新記録を樹立した、東京国際大学のリチャード・エティーリ選手の素顔を紹介する。(全3回の3回目/3回目に続く)
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国土の大部分が標高1000メートル超え…ケニアはどんな国なのか
アフリカ大陸の東側、東アフリカと呼ばれるエリアに属するケニアは、インド洋に面した赤道直下に位置している。
日本の約1.5倍の面積を持つ国土は、国の西部を南北に走るアフリカ大地溝帯が特徴的で、東アフリカを縦断するグレートリフトバレーとも呼ばれる巨大な谷は、数千万~数百万年前の地殻変動によって形成されたという。
ケニア国内では幅40~60キロにわたって大地を二分していて、この地溝帯の両側には高原が広がっている。国土の大部分が標高1000メートルを超える高地だ。
赤道直下の4文字からは、酷暑のイメージが強いが、高い標高のおかげで年間を通じて比較的涼しい。首都ナイロビでさえ標高1600メートルにあり、年間の平均気温は、日中の最高気温で25度前後、朝晩は15度程度まで下がる。ケニアで冬にあたる7~8月の就寝時は、毛布が手放せないほどだ。熱帯というイメージとは程遠い、過ごしやすい環境である。
世界的スターが育った「ランナーの聖地」リフトバレー地域
ケニアが世界的な中長距離大国として知られるようになったのは、この地理的条件と深く関係している。特に、国土の西部に位置するリフトバレー地域は「ランナーの聖地」と呼ばれ、世界記録保持者から五輪金メダリストまで、数え切れないほどの名選手を輩出してきた。
リオデジャネイロ五輪(2016年)、東京五輪(2021年開催)の男子マラソンを連覇したエリウド・キプチョゲ、男子800メートルでロンドン五輪(2012年)、リオデジャネイロ五輪の金メダルを獲った世界記録保持者のデービッド・ルディシャ、女子1500メートルでリオデジャネイロ五輪、東京五輪、パリ五輪(2024年)の3連覇を果たしたフェイス・キピエゴンといった世界的スターたちも、このリフトバレー地域の出身だ。




