今年10月、26年前に高羽奈美子さん(当時32歳)を愛知県名古屋市で殺害したとして安福久美子容疑者(69)が逮捕された。被害者の夫である悟さんが、事件当日の記憶を振り返る。
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「奥さんが倒れてる」と連絡
事件が起きた99年11月13日。午前9時頃に仕事に向かう悟さんを送り出した奈美子さんは、午前11時頃、2歳の航平さんを連れて近所の病院へ。その後、目撃証言はないが、正午から午後1時の間が、犯行時間だったと見られている。
午後2時頃、大家が家で採れた柿を届けようと201号室を訪ね、無施錠だったことから室内を見たところ、血だらけの奈美子さんを発見。119番通報したというのが、判明している一連の流れだ。
悟さんが当日の状況を振り返る。
「その日僕は、家から車で10分とかからない、北区にあるマンションのモデルルームにいました。午後2時半頃ですが、我が家の斜め上の階にいる、奈美子のママ友から連絡があったんです。たまたま僕はトイレかどこかにいたんですけど、戻ってきたら、いま、高羽さんの奥さんのお知り合いから、奥さんが倒れてるんで、すぐに帰ってきてって連絡がありましたと言われ、取るものも取りあえず帰りました」
事態を飲み込めなかった悟さん
事件に巻き込まれたとの説明は、一切なかったという。
「最初は吐血して倒れてるって話でした。で、部屋に行ったら玄関から血がいっぱいあって、警察はまだ来ていない。救急隊員だけ。彼らの靴で玄関先が埋まっていました。みんなの靴の間に自分の靴を入れて、奈美子のところを見に行ったら、すごい大量の血が胸の下にあったんで、吐血して死ぬということは、すごい血を吐くんだなと思って、全然殺人事件だとは思わなかった」
このように書くと、当時の悟さんが落ち着いていたかのように感じるかもしれない。だが、続く私とのやり取りからは、彼がいかにショックを受け、呆然自失だったかが窺える。
「救急隊の人から、鑑識を呼ぶんでって言われて、それから、誰もこういう風で亡くなったとか言ってくれないんで、ある人を呼び止めたんですよ。で、『どうなってるんですか』って言ったら、『首を切られてる』って言うもんですから……」


