経済学者・成田悠輔さんがゲストと「聞かれちゃいけない話」をする連載。今回のゲストは、3月11日にニューアルバム『禁じ手』が発売となる椎名林檎さんです。(構成・伊藤秀倫)
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ダサくないと駄目なんだろうなって思ってました
成田 1位を取れる曲の条件って何なんでしょうかね? 音楽にそんな愛も憎しみもないような一見さんにも届いちゃう音楽って何が違うんでしょうか?
椎名 20代の頃は、それこそダサくないと駄目なんだろうなって思ってました(笑)。だって、よくそういうことを言う人がいたんですよ。「私にはちょっとおしゃれすぎる」とか「洗練されすぎてて自分には用がない感じがする」みたいな感想を言う人っていません?
成田 おしゃれの壁ありますね。
椎名 音楽に限らず、インテリアとかでも、映画とかでも。インターネットのレビューとかで、そういう評価の仕方があるんだと知って、「何その感想」と或る種のショックを受けたんです。でも、そういう人たちがちょうどいいと思うものがあるわけですよね。それでやっと「そうか、だから羽田空港とか成田空港は超ダサいんだな」って。
成田 飛行機から降りて寝ぼけ眼で日本の広告眺めると「あぁ日本に帰ってきた」という気分にさせてくれますね(笑)。
椎名 海外から帰ってくると「何その看板のフレームの色」とか「変なポスター」とか「もうヤダ。もっとかっこいい文化的な国なのに」とか思いながら通らなきゃいけない。分かります? でも、あれを居心地がいいって思う人が大勢いるからああなってるんだな、って。「どうでもいいけど何となくまあ自民党かな!」みたいな人たちの票が積もり積もってのオリコン1位なのかもしれないと。どこかの段階で仮説を立てたんです。
成田 広告とかCMの99%はダサさを追求してるようにしか見えないですね。
椎名 「私にちょうどいい」みたいなことでしょう? そんなのってどうなんだろうと思っちゃいますよね。20歳ぐらいの時にドイツに連れていってもらったことがあって。で、ベルリンは、街に降りたら全部がかっこいいんですよね。色合いも、造形も、老若男女に優しくて、おしゃれだし、洗練されてるし、街を走る車もすべてが調和して快適。ポストでも、券売機でも、すべてが押し付けがましくなくちょうどいいと思ったんですよね。「日本も、こんな風にできるはずなのにな」「むしろ、かつてはぶっちぎりだっただろうにな」と思って、不思議でした。

