これからは「終活」を始めようと思っています
岡村 オリンピックのような国家プロジェクトって、想像を絶する大変さだと思うんです。特に人間関係に神経をすり減らしますよね。言い方は悪いですが、クリエイティブとは真逆の人々と対峙せざるを得ませんから。しかも周囲は男性ばかりだったと思うんです。やりにくくなかったですか?
MIKIKO 洗礼は受けました。あの頃、「多様性」が叫ばれるようになったので、いろんな場面で男女比を合わせなきゃいけないムーブメントがあって。ある賞の審査員を頼まれたときには、「女性を入れなきゃいけないんです」なんて言われたこともあるんです。
岡村 ああ……。
MIKIKO だから、オリンピックの演出チームに私が入ればちょうどいいんだろうなと。結構、俯瞰してました。「女性を演出家にしている俺たち、時代に先駆けてるよ」みたいな空気も感じましたし。というか、あのとき、すごく言われたんです。「オリンピックの女性演出家は世界初だから。ニュースになるよ」って。
岡村 失礼だなあ。
MIKIKO でも、彼らはそれが失礼だと思ってないし、何が失礼であるのかもわからない。で、結局、すべてが中止となった。ステイホームの間にいろいろと棚卸しできたんです。そこで思ったのが、「再び始める」ことをしなくてもいいんじゃないかと。これからは「シュウカツ」だなって。
岡村 え、シュウカツ?
MIKIKO 「終える」「活」の「終活」を始めようと。
岡村 えーっ!
MIKIKO ブームなんて必ず去るものだから、自分にとってもっとも神聖で大事に始めたこのダンスを、きちんと形として残し、オリジナリティのある日本のダンスとして、ほんのわずかでいいのでダンスの歴史に刻まれることができればと。そのためには何をすべきだろうかと。
