今年11月7日の高市首相による台湾有事発言以降、日中関係が冷却したことは、すでに広く知られている通りだ。発言から約1カ月半が経過し、これに反発した中国側の日本に対する強硬姿勢は、すでに半ば固定化しつつある。この事態は今後どの程度続くのだろうか? (全2回の1回目/続きを読む

対日圧力を強めている中国(写真:Gengorou/イメージマート)

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最悪の場合は5〜10年単位で継続

 参考になるのが、かつて中国が在韓米軍のミサイル配備に反発して韓国に加えた報復行為「限韓令」だ。2016年末以降、中国は団体旅行客の渡韓制限、韓流コンテンツの制限など、今回の対日制裁と一部似た対応を取った。その後、両国の関係改善の目星がつきはじめたのは2022年の北京冬季五輪前で、K-POPの中国コンサート再開はなんと来年1月以降である。つまり、約9年かかって中国側の怒りがやっと緩んだ形だ。

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 台湾の蔡英文政権の成立後に中国が実施した観光客の引き上げなどの制裁「限台令」も、現在まで10年近く継続している。今後も、たとえば野党の国民党が政権を奪還してよほど中国寄りの姿勢を打ち出しでもしない限り、現状が延々と続くはずだ。

 ゆえに今回の日本に対する制裁も、たとえ短くとも数年。最悪の場合は5~10年単位で継続する可能性がある。そこで気になるのが、中国による長期間の日本締め出しでどんな事態が生じるかだ。なお本稿では、韓国に対する締め付け「限韓令」にちなんで、現在の日本締め付け政策も「限日令」と呼ぶことにする。

日本コンテンツの影響力低下は避けられない

 実のところ、「限日令」のもとでも、メーカー系などの一般のビジネス現場は意外とまともに回っている例も多いという。中国側も対日経済関係をすべて干上がらせると自国の出血が大きくなるからだ。ただ、逆に言えば中国がそれほど損をしない分野では「限日令」が強まる。その筆頭が、アニメ、音楽、映画などの日本コンテンツの締め出しだ。

 そもそも、中国における日本コンテンツの影響力は長らく強力だった。古い例では、胡錦濤前国家主席が日本映画『君よ憤怒の河を渉れ』(高倉健・中野良子出演)のファンだったことが知られている。また、現在40歳前後の中国人男性は、別に日本に何の関心もない人でも、WANDSや大黒摩季の楽曲にグッときがちだ。彼らは中国でアニメ『SLAM DUNK』の再放送が大人気だった時期に青少年期だった世代である。