中国人富裕層の“日本移住ブーム”はどうなる?
いっぽう、近年の中国の富裕層・知識層の間でブームの日本移住(潤日)はどうか。潤日を選ぶ中国人は、程度の差はあれ自国内の政治的抑圧や愛国主義的な雰囲気から距離を置きたいと考えている層だ。近年の日本側では帰化要件や永住権取得の厳格化、外国人による土地取得を制限する動きなど、制度的ハードルは上がりつつあるのだが、他に中国と地理的に近くて文化的差異も小さな先進国がほとんどない以上、移住先としての「日本」は今後も選ばれ得ると思われる。
ただ、潤日する人たちは自国にうんざりはしていても、必ずしも反体制(反中国共産党)的な人たちとは限らない。中国と行き来しながらビジネスをしたり財産を管理したりしている人たちも多く、このタイプにとっては日本は以前より使いづらい国になる可能性がある。日本の生活をSNSにアップする行為も、中国にまだ拠点がある人は自粛が必要だ。結果的に移住圧はやや低下するはずだろう。都内の大手中学受験塾の生徒が中国人児童だらけに……みたいな現象も、今後は進行がゆるやかになる可能性がある。
また、今後は中国人留学生も減少する可能性が高い。「限日令」の影響で日本留学の自粛傾向が生まれている上、中国国内で流れている日本の治安悪化デマなどのプロパガンダの影響から、なにより学費を出す親世代が子どもの日本留学に反対するためだ。
日本の大学は中国人留学生に依存する学校も多く、一部の私大などは経営面で大きな影響を受けると思われる。今後、仮に5~10年にわたって来日が低調なら、各校の留学生獲得方針はベトナム人やネパール人などをターゲットにする形に転換が進むはずだ。ただ、この場合、漢字圏ではない留学生の増加で教員側の負担が増す懸念はある。
