これまで「ゲテモノ」扱いされることがほとんどだったが、日本でも近年注目が集まる「昆虫食」。半ば冗談で「経済に困窮した結果、昆虫食を強いられる時代が来るのでは」……とSNSで話題になることも多く、ある自治体がコオロギを使った給食を出すと批判が殺到するほどの事態になったことも。しかし、世界にはまだ日本人が知らない「普通においしい虫」もたくさん存在する。
例えば昆虫食の本場とされるタイでは、屋台にずらりと昆虫が売られており、食べてみると――どんな味がするのだろうか?
世界の虫を食べ歩いてきた吉田誠さんによる新著『世界の虫を食べてみたい 幻の「ミツツボアリ」と「素数ゼミ」を追い求めて』(緑書房)から一部抜粋し、お届けする。(全4回の1回目/続きを読む)
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昆虫食の本場、タイへ
「昆虫食研究するんだって? だったら本場タイの昆虫食を見ておいたほうがいい。今度行くから、お前も来い」
研究室が決まってしばらくすると、こんなお誘いが舞い込んできた。同じ研究室で、農地の土壌などを研究する溝口勝先生が声をかけてくれたのだ。向かう先は、タイ東北部のコーンケーン。タイの中でもラオス寄りにあるイサーンという地域にある都市だ。昆虫食文化が色濃く残る地域である。そこで実験を行っている溝口先生のもとに、合流することとなった。
実はこのとき、初の海外一人旅だった。その目的がまさか、昆虫を食べるためとは。そうして2011年3月、誘われるがままタイへ渡航した。
そのときの私は、タイに関する知識はほとんどなかった。「微笑みの国で、食べ物が美味しい」という雑な理解のまま、『地球の歩き方』と『旅の指さし会話帳』を手に、まずはバンコクを軽く観光してみた。なお、バンコクでは予想外の激辛料理を誤って注文してしまい、涙を流しながらご飯を食べていたのが唯一の思い出だ。
その後コーンケーンに入り、先生方と無事合流すると、早速ナイトマーケットを目指した。ナイトマーケットとはその名の通り、夕方から深夜にかけて開かれる屋台や露店、移動販売店の集合体である。中華圏、東南アジアを中心に、昼の暑さを避け、比較的快適な夜に活動する文化から生まれた夜市だ。コーンケーンではそこに、調理された昆虫が山盛りにされた屋台が出ているのだ。

