焼きそばのように、コオロギやバッタがずらりと売られ……

 にぎわう雑踏の中から屋台を見つけると、大きな金属製のバットに、何種類かのコオロギやバッタ、タガメなどが盛られていた。片言のタイ語で虫を指さし、注文してみる。

「ニー(これ)、タオライカップ(いくら)?」

 幸い言葉は通じたが、返答の値段が聞き取れない。同行してくれたタイ人学生や先生たちに教えてもらいながら購入して、味見をしていった。

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まるで焼きそばか何かのように、当たり前に昆虫が売られている(書籍より)

 屋台の虫はどれも油で揚げてあり、サクッと食べやすく美味しい。私が虫を食べるのは初めてではなく、昔、愛知の祖父母の家でイナゴを食べた思い出がある。しかしあれは、ひたすら苦かった。あの苦みは、なんだったのだろうか……?

 屋台の虫は、軽く塩味がつけてあるのも感じられた。なるほどこれは、ビールとともに食べるのに、もってこいのスナックだろう。日本では、「ゲテモノ」「貴重なタンパク質」といった取り扱いになりがちな昆虫食だが、ここでは単なる嗜好品であることがよくわかった。日常の暮らしの中にある「おつまみ」としての昆虫食に、初めて触れた瞬間だった。

 後に確認できたことだが、タイ各地の屋台を回っていると、(当然だが)量を確保しやすい虫がよく並んでいる。揚げて売られている昆虫はどこでも似通っていて、タイワンツチイナゴ、タイワンオオコオロギ、タケノメイガ(幼虫)、カイコ(蛹)、ヨーロッパイエコオロギ、タイワンタガメなどをよく見かけた。

食用の虫たちはどうやって「生産」されているのか?

 本場の屋台昆虫を堪能した翌日は、溝口先生の研究フィールドに同行させてもらった。自分の背丈より高いサトウキビや、日本とはスケールの違う広大な水田を見ながら、コーンケーンのフィールドを満喫していた。

 タイの平均気温は約29℃。暑いが、刺激的な海外フィールドだ。でも、昆虫はどこだろう……? 屋台で食べた以外は、あまりお目にかかれていない。フィールドにデータ収集用の機器を設置するのを手伝う傍ら、昆虫を探してみる。

 しかし屋台で売っているような昆虫は、あまりいない。となると、屋台の昆虫は野生で採取したもの以外も混ざっているのでは?

屋台の昆虫は、いったいどう「生産」されているのか……? ©wensu/イメージマート

「タイでは昆虫を養殖していたりしますか?」

 フィールドに同行していた、コーンケーン出身のタイの方に聞いてみると、正解であった。昆虫を養殖している農家があるとのことである。当時は、食用昆虫の養殖など聞いたこともなかった。それはぜひ、現地を見たい! 頼み込み、農家の見学をさせてもらえることになった。

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