〈Dの答えの大半は「なにも考えてないです」である。その場に居あわせながら自分には関係がないと感じられるものなのだろうか。そこにいるのに、いないと思うことのできる分裂した感覚。「支配者」の意思にしばられ、コントロールされるだけの空洞化した身体。〉(藤井誠二『17歳の殺人者』)

 裁判で検察はDを次のように糾弾している。

〈Dは、怠惰な性格で、反社会性が顕著であり、中学3年時には、家庭内暴力、怠学、家出等のため、虞犯少年として保護観察処分に付されたほか、折りたたみ式ナイフの所持及び出身中学で投石し窓ガラスを割るなどしたことで不処分になった非行歴等もある。また、凶暴な性癖を有し、被害者の殺害行為にも積極的に関与し、同被告人の行為が被害者の死亡に大きく寄与したものと認められ、刑事責任は重大である〉

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X子さんが激しい暴力を振るわれていたときも…

 Dの犯行での役割は「監視役」だが、実際にCの家に行った目的は強姦でも暴力でもなくファミコンだった。1983年に任天堂が発売したファミリーコンピューター、通称ファミコンは大ヒット商品となり、当時の少年たちはこぞってファミコンを持っている友人の家に入り浸ったものだ。だが、DはCの部屋でおぞましい暴力が繰り返されていても、外界を閉ざすかのように関心はファミコンにしか向いていなかった。

©AFLO

 監禁するためにAたちが外にヤクザがいっぱいいると噓をついてX子さんを脅していたときも「とくに何も思っていない」。

 X子さんが激しい暴力を振るわれていたときも「ずっと見ていないです」。

 逮捕から200日以上勾留されて心情を問われても「別に考えてないです」。

 母親に会いたいかと聞かれても「思わないです」。

 一体Dのこの無関心さは何だろうか。普通はもっと何かしらの感情が湧くはずだ。他人だけでなく自分自身の感情にも蓋をしているかのようだ。一方、Dの一つ上の姉は弟と違い気丈な性格だ。事件当時はAと交際し、結婚を誓った仲だった。暴力団幹部とつき合いを深めていくAに「自分がソープランドで働くから職場に戻りな」とまで言って、道を踏み外していくAを引き留め、立ち直らせようとしていた。対照的な姉弟だ。

 10日後、再びアパートの前で張り込む。前回と同じ時間帯に母親がごみ出しに現れた。僕は車から降りて、用意していた手紙を渡した。少し驚いた顔をしたが、拒絶感はない。

「また寝てから、仕事に出ます。午後10時半ごろに帰ってきて銭湯に行くんです」

 夜、会えるかと聞くと、母親は大丈夫だと答え、「息子は家にいて仕事をしていない」と短く付け加えた。

次の記事に続く 《女子高校生コンクリ詰め殺人事件》母思いだった息子は、なぜ変わってしまったのか…「自分もつらい。眠れない」監視役少年Dの母の証言

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