たとえば、「ラヴ上等」のスタジオメンバーで芸人の永野氏との対談で、MEGUMI氏は「ヤンキーの子たちは、好きも嫌いも喜怒哀楽の感情を全部出して、それを世の中に投下する。恋愛を通じてそれを表現するというのは今、必要なことではないかなと思い、この企画を立ち上げました」と、この企画意図を語っている(〈MEGUMI × 永野が語るNetflix「ラヴ上等」 恋愛離れの時代に届けるヤンキーの“本気”と“覚悟”のリアリティーショー〉WWDJAPAN、2025年12月13日配信)。
当事者から、これでもか、と種明かしがされている以上、屋上屋を架すのではなく、なぜ、私たちは「ヤンキー」が好きなのか、を考えたい。その格好の事例が、「ラヴ上等」と同じく、この年末年始にあったからである。それは何か。
「永ちゃん」は紅白で9分も歌った
2025年の紅白歌合戦での矢沢永吉氏の歌唱時間である。前半95分、後半165分の合計280分間に50組もの出場歌手がおり、さまざまな特別企画があるため、単純に平均しても5分ほどである。
コラムニストの堀井憲一郎氏によれば、もっとも少なかったCANDY TUNEは1分29秒、次のFRUITS ZIPPERが1分30秒だったのに対して、矢沢永吉は、その6倍以上にあたる9分29秒だったという(〈9分以上の歌唱者も出た2025年紅白歌合戦 NHKがもっとも大事にしたのはどの歌手だったのか〉Yahoo!ニュース、2026年1月1日配信)。
永ちゃんこと矢沢永吉氏こそ、いまも昔も「ヤンキー」の憧れではないか。社会学者の難波功士氏は『ヤンキー進化論 不良文化はなぜ強い』(光文社新書、2009年)のなかで、矢沢氏がボーカルだったバンド・キャロルの服装を真似する「キャロル野郎」たちが「ヤンキー」と称されたと述べている(同書、64ページ)。
紅白歌合戦という国民的番組が、2025年に最長の放送時間を割いたのが「ヤンキー」=矢沢氏だったのであり、時を同じくして「ラヴ上等」が耳目を集める。偶然と呼べるだろうか。21世紀も4分の1が過ぎてもなお、いや、過ぎてますます、徳力氏が説いたように「日本の『ヤンキー文化』も、日本しか生み出せない日本ならではのコンテンツ」だと言えるのだろうか。