AIの評価値は“芸術作品の値段”に似ている

――いやいや、時代が追いついたということだと思います。さて、ビジネス的な視点で見ると、評価値の影響はどう考えますか。

糸谷 やっぱりわかりやすいというのは大きいですね。野球のスコアボードのように、どっちが優勢かを瞬時にわかるのは、初心者の方にとって大事な指標です。だって「おお、追い込まれているのか」とわかるだけで、より気軽に楽しめるようになりますから。

――「ニコニコ動画」をきっかけに始まった評価値とともに観戦するスタイルも、すっかりおなじみとなりました。黎明期は、棋士も自分の将棋を数値で判断されることに抵抗感もあったかもしれませんが。

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糸谷 プレイヤーとしては、気持ちがわかります。将棋の一手の面白さ、美しさは評価値だけで判断できません。例えば、芸術家が「お前の作品は1000万円か。俺は3000万円だ」といわれたら、「金で価値を判断するんじゃねぇ!」となるじゃないですか(笑)。芸術の市場価格が一面的な評価に過ぎないように、将棋の評価値も同じだと思います。

――棋士だけではなく、将棋ファンもその辺りを理解している人が多い気がします。そうでなければ、対局者や控室の取材も不要で、評価値だけの実況でよくなりますから。

糸谷 大事なことは、評価値が楽しみ方の間口を広げていることです。はじめは評価値だけでプロの対局を観戦していても、棋士の解説や本人の振り返りを聞く機会があれば「実際はそういうことを考えていたんだ」と視点を変えて楽しんでいただけるかもしれない。

 ですから、ファンの方の興味にあわせて、いろいろなコンテンツを数多く提供していくのがいいでしょうね。

撮影=細田忠

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