ちなみにクーは、同じくギデンズ監督の第2作『怪怪怪怪物!』(2017年)にはカメオ出演しており、『赤い糸』ののち、第4作『ミス・シャンプー』(2023年)ではギデンズ作品の助演を初めて担っている。

「どんな小さな役でも断らないようにしています」とクー。「脇役はひとつの実験みたいなもので、自由に楽しみながら演じるチャンス。監督の指示に従いつつもリラックスし、遊び心を持つことで、新しい化学反応を起こせると思うんです」。

『ミス・シャンプー』©2026 MACHI XCELSIOR STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.

初めて映画を監督して感じたこと

 ギデンズとの関係を大きく変えたのは、初めて監督業に進出した『黒の教育』(2022年)だった。男子高校生3人が、卒業式の夜に“秘密”を告白しあったことをきっかけに、恐ろしいトラブルに巻き込まれていくブラックコメディで、ギデンズが原作・脚本を務めた。

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「2021年、台湾で新型コロナウイルスの感染が広がったころに脚本を練っていました。コロナ禍で仕事ができず、ひたすらオンラインで脚本の打ち合わせをしていると、物語と一緒に自分も成長したように感じられたんです。社会の裏側やリアルな側面を描いた脚本で、自分の手で表現したいところがたくさんありました」

 もともとはクーの事務所が映画をプロデュースする企画で、クーが自ら監督する計画ではなかったというが、ギデンズ側が監督として推薦。その後、本作の準備は『赤い糸 輪廻のひみつ』のプロモーションと同時に行われた。

『赤い糸 輪廻のひみつ』©2026 MACHI XCELSIOR STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.

 ギデンズによると、慣れない監督業との両立に当時のクーは疲れ切っていたそう。当時を振り返り、ギデンズは「彼に向かって“そんなに疲れてるなんてまだまだだな、ぜんぜん成熟してないな”と軽口を叩いたのを覚えています」とほほえんだ。

 プロデューサーにも名を連ねているギデンズだが、『黒の教育』の製作には脚本を除いてほとんど関わらないと当初から決めており、創作はクーに委ねている。完成した映画を、ギデンズは心から喜んだそうだ。

「ギデンズが満足してくれて本当にうれしかったし、それまでとは異なる評価をもらえたこともうれしかった。俳優としての自分とは別のかたちで認めてもらえたように思います。それからは積極的に僕の意見を求めてくれたり、新しい提案をしてくれたり、一緒に創作することも考えてもらえるようになりました」