『あの頃、君を追いかけた』(2011年)や『怪怪怪怪物!』(2017年)などを手がけた台湾の映画監督ギデンズ・コーが、2025年12月に来日した。監督第3作『赤い糸 輪廻のひみつ』(2021年)が日本にて口コミ効果で大ヒットしたことを受け、監督全作品の一挙上映企画「ギデンズ・コーが語る、ギデンズ・コーの世界」が池袋・新文芸坐にて開催され、ギデンズは全上映のトークに登壇。観客からの質問に答えた。

ギデンズ・コー監督

 2年ぶりの来日となるギデンズは、「映画のおかげで日本に戻ってこられてうれしい。映画を通じて、映画を愛する皆さんと再会できる旅行は最高です」と語った。「映画は正直なもので、若い頃の自分自身にも再会させてくれます。このような機会をいただけて感謝しています」。筆者は舞台挨拶の合間を縫って、ギデンズ・コー監督への単独インタビューを実施。「台湾映画史上最高のスケール」と胸を張る最新作『功夫(原題)』の台湾公開を2月に控えた今、クリエイターとしての本質に迫った。(全2回の1回目/2回目を読む

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日常にはない英雄的な行為を映画に織り込みたい

 ネット小説から創作活動をスタートさせ、自伝的小説を自ら映画化したデビュー作『あの頃、君を追いかけた』が日本でもヒットしたギデンズ・コー。『赤い糸 輪廻のひみつ』は人間界と冥界、時空を超えた壮大な恋愛ファンタジーだが、『あの頃~』のエッセンスも感じさせる1本だ。

『あの頃、君を追いかけた』©Sony Music Entertainment Taiwan Ltd.

「今年(2025年)に観た映画で印象に残っているのは『Eternity(原題)』。アメリカのラブコメディですが、ボロボロと泣いてしまいました。『赤い糸』にも似ている映画です」

『Eternity』(日本未公開)は、ひとりの老女が病気で命を落としたあと、長年連れ添った夫か、若くして戦死した昔の夫か、死後の世界で永遠に過ごすパートナーを選ぶ物語だ。「自分を犠牲にしてでも相手を喜ばせたい、という感情を描いた映画でした。僕自身、父親になってから強く感じている気持ちです」とギデンズは言う。

 ギデンズ自身、『赤い糸 輪廻のひみつ』を含むいくつもの作品で自己犠牲やヒロイズムを描いてきた。ひとりのクリエイターとして、物語のテーマに共感をおぼえたという。

「創作に没頭していると尊い感情が育まれ、普段の自分よりもずっと良い人間になれる気がしてきます。日常生活ではできないからこそ、物語には英雄的な行いを織り込みたいのです」