愛や憎しみを手放せない人がクリエイターになる

『あの頃、君を追いかけた』と『赤い糸 輪廻のひみつ』では、愛する人との別離をじっくりと描いた。『怪怪怪怪物!』と『ミス・シャンプー』にも通じる要素がある。ギデンズ・コーは「別れ」を描き続けている作家ではないか――そう尋ねると、考えながらこう答えてくれた。

「僕は本当に往生際が悪いんです。さまざまなものに執着し、なかなか手放すことができない。だから描くキャラクターも、たとえば女の子や犬など、何かに強く執着しています。僕は“お別れ”をすることが本当に苦手なんです」

『赤い糸 輪廻のひみつ』©2026 MACHI XCELSIOR STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.

『赤い糸 輪廻のひみつ』では、あるキャラクターが終盤で「転生など考えたこともない」と口にする。現世に何も思い残さず、きっぱりと別れを告げるその一言が、ギデンズの最も好きなセリフだそうだ。

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 そして「今、昔のことを不意に思い出しました」という。中学時代に好きだった女の子とのエピソードだ。

「彼女とは放課後よく一緒に帰っていて、ほとんど付き合っているようでした。ある時から突然連絡を取らなくなったんですが、大学生になってから付き合うことになったんです。それで、『あの頃あんなに仲良しだったのに、どうして話してくれなくなったの?』と聞いたら、彼女はそのことをまるで覚えていなかった……。昔はお互いが好きだったのに、彼女は僕のことを忘れてしまったようで、とても不公平だと思いました」

『赤い糸 輪廻のひみつ』©2026 MACHI XCELSIOR STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.

『赤い糸』の悪役である鬼頭成は、以前の仲間から裏切られたことを忘れられずにいる。けれども裏切った本人たちはその事実を忘れて転生し、新たな人生を歩んでいく。鬼頭成はそのことが許せない――これもまた、ギデンズ自身の投影だ。

「当時の僕のほうが、もしかすると鬼頭成より怒っていたかもしれません(笑)。もちろん、愛であれ憎しみであれ、いずれ手放さなければ先には進めません。それは現実であり人生の真理です。それでも手放せない人がクリエイターになるのだと思います」