借金を返し終えても、あるいは年季が明けても、彼女たちを待っていたのは幸せな結末ばかりではない。 真面目に勤め上げ、あと数日で自由の身になるはずだった女性が客に絞殺された事件、将来を誓い合った軍人と娼妓の心中、そして身寄りのない女性が井戸へ身を投げた孤独な死……。
ここでは、ノンフィクション作家の澤宮優氏が、西日本有数の巨大遊郭があった二本木について迫った『かつてこの町に巨大遊廓があった 熊本・二本木の歴史と記憶をたずねて』(忘羊社)の一部を抜粋。当時の新聞記事等を参照しながら、色街で生きた人々の最期を紹介する。
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無理心中もあった
二本木のある古老が語ってくれた。
「心中というのは黙ってやるもんだから。事情を知らない人は、あんなに利口者だったのに、などと噂していました。男に騙されて、相談する人もいなかったんでしょう」
まだうら若いころから妓楼に投げ込まれ、真っ当な恋愛経験もないから、中には本気で客に惚れる娼妓もいた。本来はしたたかに男を手玉に取る側なのだが、寂しさや弱さ、悩みを抱えていればつい人としての情に流されてしまうこともあった。非道な楼主らの折檻がもとで自殺する娼妓もいた。
「いろんなパターンがありましたが、ほんに可哀想やった」
当時の新聞も折々に二本木での心中事件を伝えている。