日本国民に愛されている国技・相撲。しかし、土俵の裏側でどんなことが起きているのか、力士たちがどんな生活を送っているのかを知っている人は、少ないのではないだろうか。

 ここでは、相撲界の裏話と感動秘話を綴った朝日新聞記者・抜井規泰氏の著書『白鵬はなぜ嫌われなければならなかったのか だれも知らない角界不思議話』(講談社+α新書)より一部を抜粋。「ちゃんこ鍋」の秘話を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く

写真はイメージ ©mike_taro/イメージマート

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「ちゃんこ=鍋」ではない…「ちゃんこ」の定義と由来

 ちゃんこ——。

 相撲好きでなくても、この言葉を聞いたことがあるだろう。ところが、多くの方は、こんな勘違いをしている。朝日新聞の同僚記者もほぼ全員そうだったのだが、「ちゃんこ=鍋」だと思っている。

「ちゃんこ」は、力士の食事のことで、お相撲さんが食べれば、カレーだろうがハンバーガーだろうが、それがちゃんこだ。

 力士がよく食べる鍋料理も、ちゃんこの1つに過ぎないのだが、ちゃんこと言えば鍋、というイメージが定着してしまっている。

 そもそも、なぜ「ちゃんこ」と呼ぶのか。

 諸説あるのだが、先代佐渡ケ嶽親方(元横綱琴櫻)が教えてくれたのは「親方と弟子が一緒に食べるからだよ」。往年の時代劇「子連れ狼」をご存じだろうか。乳母車に乗った幼子の大五郎は、父を「ちゃん」と呼ぶ。ちゃん(父)と子で、ちゃんこだ。

 この相撲部屋のちゃんこ鍋。お世辞抜きで、とにかくうまい。私が初めて食べたのは、由来を聞いた佐渡ケ嶽部屋だった。

 大鍋で煮込まれ、肉や野菜の具材から大量のダシが出る。それをしっかり吸った油揚げ。しなしなになったキャベツと一緒に鶏肉をかみしめると、ダシと肉汁がじゅわーっ、と口に広がる……。