「東京博善は一線を越えた」葬儀業への進出に葬儀業者から反発
3番目の葬儀業への進出は火葬場専業からの脱却である。火葬場の顧客は葬儀業者だ。喪家からの依頼を受けた葬儀会社が、火葬日時の予約を取り、場合によっては6斎場の式場を使って葬儀・告別式を行う。喪家からすれば火葬場にすべてを委ねれば便利だが、葬儀業界は反対である。
一般葬から通夜なしの一日葬、あるいは焼却して遺骨を引き取るだけの直葬へと簡略化しても、火葬場だけは使わざるを得ない。その絶対的立場の火葬場を持つ東京博善が葬儀業に進出してくれば、葬儀業者の客を奪うのは明白だった。
これまで火葬場と葬儀業者は不文律として「ウィンウィン」の関係を続けてきたが、「普通の会社化」とともに東京博善は一線を越えた。
都内6カ所の火葬場を式場とともに使えるのは大きなメリット
廣済堂は2020年に100%子会社の「広済堂ライフウェル」を立ち上げ、2022年には大手葬儀会社の燦ホールディングス(HD)と合弁で「グランセレモ東京」を設立した。燦HDは葬儀業大手の公益社を傘下に持つ。
グランセレモ東京は、設立のコンセプトとして、「ご遺族の望む葬儀を明瞭な費用で実現」「高レベルの研修制度で高品質の葬儀を提供」「グリーフケア(死別の悲しみをサポート)を含めた葬儀後の遺族への寄り添い」などをあげていた。
一般の葬儀社と特別な差別化があるわけではなく、広済堂ライフウェルもほぼ同じである。だが、都内6カ所の火葬場を式場とともに使えるというのは大きなメリットで、両社とも受注は確実に増えている。
火葬料を値上げし、葬儀業に進出して、高収益体制を確かなものに
斎場(式場)運営事業と葬儀業を合わせた葬祭収益セグメントの2024年3月期の売上高は、新式場の利用が順調に拡大したことで前年同期比45.4%増の92億8400万円、利益は84.8%増の41億3000万円だった。この路線を敷いた黒澤は、2024年3月期決算を発表した同年5月15日の説明会で、次のように述べた。
「社長在任の3年間でリスクを取って広済堂のメインを葬祭事業にしてきました。子会社(東京博善)は、業界の古い慣習に縛られ、しがらみもありましたが、改革できたと思います。(葬儀業界から)お叱りをいただくことも覚悟して舵を切りました。リスクを取りそれに見合う利益を得て成長させた3年間だったと自負しています」
