都内23区内の火葬事業の7割超を握る会社、東京博善。親会社の廣済堂が中国人実業家・羅怡文(らいぶん)氏グループの傘下企業となり、火葬料金の値上げが行われた。

 それに対し葬儀業界は「火葬は公共性の高いインフラなのに許せない!」と反発し、マスメディアでも連日、火葬料金の値上げに関する報道が流れた。いったいなぜ、東京博善は業界の反発を受けながらも火葬料金の値上げに踏み切ったのか。

 ここでは、日本の火葬と弔いの歴史に迫ったジャーナリスト・伊藤博敏氏の著書『火葬秘史: 骨になるまで』(小学館)より一部を抜粋し、火葬料金値上げの背景を紹介する。(全3回の1回目/2回目に続く

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写真はイメージ ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

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業界の反発を受けながらも進めた火葬料金値上げ

 廣済堂は、クビから値札をぶら下げた状態の上場企業として、「経済合理性」を問われて争奪戦となり、羅怡文グループの傘下企業となった。その後、羅は廣済堂を持ち株会社化して広済堂ホールディングスと体制を変え、東京博善を100%子会社にして機動性を高めた。

 それだけの資金を投じた以上、羅らは投資効果を上げるために東京博善の事業領域を広げ、さらに収益性を上げねばならなかった。

 考えられる方向性は3つだった。1番目は本業の火葬業の充実。つまりは火葬料金の値上げである。2番目は小規模化する葬儀事情に合わせた式場の効率的運用。具体的には斎場内の式場の数を増やすことだ。3番目は葬儀業への進出。火葬場と式場を備えた東京博善が葬儀全般を引き受ければ、一気通貫のサービスとなり利用者にとっては便利だ。

 この方向性は2019年末までの羅のグループ入りから始まり、2021年7月以降の黒澤洋史社長体制下でさらに深まった。