――フィクションだとしたら、ここからもっと面白くなるはずなのに、ここで終わっちゃうの? っていうのを主人公自身も思っている。
波木:はい。
――自分の人生を俯瞰してフィクション的に捉える見方って、現代だとあるあるなのかなという気がして、その辺りも皮肉が効いているなと思いました。
波木:そういうテーマとか雰囲気は、この短篇集全体に共通している空気感かなと思います。
世界に希望は持っていますか?
――この短篇集『順風満帆〈クラウド・ナイン〉』ですが、松本清張賞の後輩にあたる井上先斗さん(第31回受賞者)が、すでに読んでくださっていて。「今年読んだ新刊本の中でも最上位と感じる短篇集」とXでポストしてくださっています。
波木:ありがとうございます。
――井上さんに「波木さんに聞きたいことありますか?」と尋ねてみたんです。そしたら、こうおっしゃいました。「波木さんは、世界に希望は持っていますか?」
波木:ええっ……。重たい質問ですね。
――井上さんも波木さんも、この世界の“クソさ”みたいなことを作品の中で取り上げてらっしゃると思うんです。井上さんは、そのクソな世界に対する向き合い方に波木さんと自分とでは違いを感じると。波木さんは、真っ向からひっくり返そうとするより、一旦それに乗っかって裏をかいていくような感じがある、というようなことをおっしゃっていました。
波木:そうですね……やっぱり順応してもいけないし、かといってニヒリスティックになり過ぎてもいけないと思うんですね。だからこう、折り合いを見つけて、どうにかこの隙間をかいくぐっていくっていうのは、結構自分の中にあるスタンスかなと思います。
――それは作品作りにも影響してきますか?
波木:そうですね。これまで当然とされていたような常識とかルールとか、そういうのがひっくり返る瞬間、そういうものが意味を持たなくなる瞬間っていうのが一番面白いと思うんですよ。だからそういう瞬間を切り取っていきたいなと思っています。
波木銅(なみき・どう)
1999年、茨城県生まれ。大学在学中の2021年、『万事快調〈オール・グリ―ンズ〉』で第28回松本清張賞を受賞しデビュー。他の著作に『ニュー・サバービア』がある。
