いきなり焼きソバと生卵のドアップで始まり、しかもデヴィッド・リンチ風の不穏な効果音付きだから、画面に釘付けである。
溶き卵に焼きソバをつけると、音をズルズルたててすする若い男。それを気味悪そうに見ている年上の男が「あの、野菜とか、サラダは?」と口を挟む。
大げさに怯えてみせる中年男は、おお、中島歩じゃないか。外見は彼もかなり不気味というか異彩を放っている。全盛期のロッド・スチュアートにも似た長髪で、後ろ髪はさらに長い。
この冒頭シーンだけで、『俺たちバッドバーバーズ』が文句なしの傑作と確信できた。監督、脚本は『ベビわる』シリーズの阪元裕吾だ。
W主演っていってもいいかな。中島を相手に生意気な若い理容師を演じるのは『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』で、いい味を出してた草川拓弥だ。
原宿のオシャレな店に勤めていたが、生き方に迷って“自分探しの旅”に出たのが、中島演じる四〇歳の美容師、日暮歩(ひぐれあゆむ)だ。半世紀前の青春映画のようにヒッチハイクで降りたった田舎町で、汚れた髪をさっぱりしようと入ったのが月白(つきしろ)理容室。月白司(つかさ)(草川拓弥)の古びた理髪店だ。
洗髪されて気が緩んだ歩が、どこかお痒いとこはと訊かれ、全身どこも、足も痒いかな、と口にした瞬間だ。月白の態度が一変して「アナタ、もしかして、そっちの依頼人?」
表社会では解決できないトラブルを力で解決し整える便利屋だから裏(リ)・用(ヨウ)・師(シ)なんだって。草川の格闘シーンは魅せる。『エブリデイ!』で髙石あかりや伊澤彩織を相手に息つく間もない攻撃をみせた。伊澤のようにスタントパースン系かと思ったら、ダンサーもこなすんだってな。
そんな草川と対照的に、大げさで、間の抜けた表情で笑わせるのが中島で、ここまで腹を抱えて笑ったのも久しぶりだ。
昨年『あんぱん』でヒロインの誠実な夫を演じた中島が『あさイチ』にゲスト出演した。ドラマと異なる間延びした声に司会陣が驚くと「はぁーい、ゆとり世代ですからぁ」とニヤリ。かと思うと京都鴨川べりでは、NHKの若い男子アナ相手に、特大のカキ氷を超速でペロリと平らげ、相手アナは笑いで悶絶していた。
ヤバイ月白理容室を命からがら逃げだし、田舎町には不似合いなフランス風の美容室に採用され、丁寧な接客と確かな技術で重宝される。ところが、こちらも裏の店だった。店主が、自分の気に入った髪に仕上げると、その“作品”だけを手に入れる変態美容室だった。
誠実な夫から痙攣的な笑いまで。ロウ・イエ監督『サタデー・フィクション』では残虐な特務機関員を演じた。そんな中島が草川を相手に、不穏とドタバタをどう演じるか楽しみだ。
『俺たちバッドバーバーズ』
テレビ東京 金 24:42~
https://www.tv-tokyo.co.jp/badbarbers/



