「男性棋士は社員、私たちは派遣さん」と言われてきた

「タイトル戦に関することは、スポンサーとの契約窓口である将棋連盟が一手に引き受けているのが実態で、決定権限は常務会、理事会にあり、女流棋士で構成される女流棋士会に何かを相談することは基本的にありません。将棋連盟としても、女流棋士全員の意見を集約しようとしても、年齢や立場によって意見がバラバラで、収拾がつかなくなると考えたのではないでしょうか」

 朝日新聞の取材によれば、今回将棋連盟は「14週ルール」を定めるにあたり、複数の棋戦スポンサーに「女流棋士の理解を得ている」と伝えていた。

 スポンサーには「これで女流棋士は納得している」と言い、当事者には「決定事項」として通知するだけにとどめていたのであれば、連盟の対応には疑問符が付く。

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©︎細田忠/文藝春秋

 2025年1月現在、現役の女流棋士は81名いるが、その構成は複雑だ。将棋連盟に所属する女流棋士が72名。2007年に将棋連盟から分裂・独立したLPSA(日本女子プロ将棋協会)所属が8名。そして中井はどちらにも属さない、唯一のフリー棋士として活動している。

 将棋連盟に所属している女流棋士も、連盟の正会員資格(棋士総会に出席し、議決において1票を行使できる)を持つのは「タイトル経験者か女流四段以上」だけで、女流の現役正会員は清水市代将棋連盟会長以下、14名に過ぎない。

 つまり、何か女流タイトル戦に関する大事なことを将棋連盟が決めるにしても、大半の女流棋士は発言権がないに等しいという現実がある。福間が会見で「個人で将棋連盟と交渉していくのは限界があると感じた」と語ったように、女流タイトル保持者ですら連盟内での発言力は非常に弱い。

 かつて女流棋士の地位向上を目指し、LPSA設立に動いた中心人物の1人でもある中井が語る。

「私たちの世代の女流棋士は正会員資格もなかったため“男性棋士は社員、私たちは派遣さん”と立場の弱さを嘆く声が常にありました。福間さんも妊娠中は、自身の体調のことや棋戦スポンサーへの配慮などがあり、どこまで自分が主張していいものなのか、大きな葛藤があったと思います。以前に話をしたときに、彼女は『後に続く後輩たちの為にも何とかしなければ』と言っていました。会見に踏み切ったのも、そうした思いがあったのかもしれません」

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