株主総会は将来の数字を判断する重要材料
杉村 ストーリーとは、どのように作るのでしょうか。
エミン 現在の売上、市場シェア、時価総額などを見て考えていきます。基本的に、「売上と時価総額を同じと考える」をベースにするとわかりやすいでしょう。たとえば、2018年の段階でソニーのゲーム&ネットワークスサービス分野はネットフリックスを上回る売上を持っていました。一方で、2社の時価総額には大きな差があり、ネトフリの17兆円程度に対し、ソニーはその半分以下だった。それでソニーの時価総額も17兆円程度まで伸びると予想したらその通りになった。そうやって自分のストーリーを組み立てます。
杉村 5年後、10年後の売上などはどう予想しますか。
エミン 将来の数字を判断する材料の一つが株主総会。ここで、経営者に「5年後の売上目標は?」「10年後の市場シェアはどれくらい?」などとよく質問していました。それを具体的な数字で答えられる経営者は頭の中にビジョンがあると言えます。「業界トップを目指します」みたいな曖昧な答えだとビジョンが見えません。もちろん未来のことなのでどうなるかわかりませんが、経営者の頭に具体的なビジョンがあることが重要なんです。もしビジョンと市場の評価が一致していなければ、何が問題なのかを検証できる。ビジョンがなければ検証すらできませんから。
株主総会は“推しの考えを知ることができる無料のファンミーティング”
杉村 私はビジョンに加えて経営者のパッションも知りたいですね。大切ですよ、パッション! この人に大切な財産を託したいと思える経営者かどうか。私が好きな経営者の一人がNECの社長兼CEOの森田隆之さん。森田さんは財務最高責任者だった頃、株主に中期経営計画を突き返され「これまで計画どおりになってきたことがないじゃないか」と叱られたそうです。そこで、信頼される会社にするべく改革に取り組み、株価も上昇した。こういった株主に対する誠実な姿勢を重視したいですね。
また、自社の製品やサービスが社会課題解決にどう役立つのかを把握して株主に明確に説明できる経営者であることも必須です。
エミン 最近あまり株主総会に行けていませんが、情報を得るという点で非常に重要な場ですよね。
杉村 株主総会は“推しの考えを知ることができる無料のファンミーティング”ですからね。また、私は経営者が従業員に対して誠実であるかも重視しています。「OpenWork」や「エン カイシャの評判」などの就職・転職用の口コミサイトに従業員のリアルな声が書かれているので参考になります。
いくらで売るかではなく、いつ売るか
エミン 太蔵さんは投資を推し活に例えていますが、私は銘柄に恋はしません。自分の描いたストーリーが完結した時、つまり予想していた時価総額に達したら、サッと売却して次の銘柄を探します。ストーリーが決まっていれば狼狽売りもしなくて済む。株価はノイズであり、毎日上げ下げするものだからそこに一喜一憂してはいけません。
杉村 株価に一喜一憂するなというのは同感ですが、投資に対する基本的なスタンスは異なりますね。私のポリシーは「いくらで売るかではなく、いつ売るか」。株を手放すタイミングは75歳から80歳頃と決めています。人生100年時代、私たち就職氷河期世代は80歳まで働くのが当たり前になるので、仕事を辞めるタイミングで徐々に売却し、それまでは配当金を狙って持ち続ける。
私の著書『杉村太蔵の推し株「骨太」投資術』では、今後10年で株価2倍、株価10倍が期待できる銘柄を分析し、それらを組み合わせてポートフォリオを作る方法を提案しています。また、骨太の方針は毎年少しずつ変わるので、以前書かれていた社会課題が解決した場合は途中で売ったり、新たな課題が生まれた場合は別の銘柄を買い足す必要もあります。

