『天と地と』のあともドラマや映画にコンスタントに出演する。このころオファーされるのは、八重のように気が強く、ばりばり仕事をこなしたりする役か、影のあるお嬢様の役が多かった。それだけに本人もそういうキャラクターだと見られがちだったが、財前は当時のインタビューでこれを否定、自身について《役によって顔つきまで変わるタイプです。だから、まわりの人に、おまえは自分を出しきっていないと言われる》と明かしたうえ、続けて《きっと、自分と似たようなキャラクターの役がくれば自分をスッと出せるんでしょうけど》と語っていた(『エフ』1992年7月号)。
1994年のドラマ『お金がない!』(フジテレビ系)で演じた東京の下町育ちの美智子はまさにそんなキャラクターだった。このドラマは当初、シリアスな内容になる予定が、撮影前に事務所にスタッフたちが来て「すみません、コメディに変わりました。財前さんは貧乏な役です」と恐る恐る伝えられたという。だが、彼女はコミカルな役を演じたいとずっと思っていたので喜んで引き受ける。撮影中はほぼノーメイクで、《素の自分に近かったので、のびのびと演じることができました》と語る(『週刊現代』2019年5月11・18日号)。
模索の時期を経て、「私は私でいい」と思えるように
翌1995年、29歳になってあいついで出演した『STATION ステイション』(日本テレビ系)、『ジューン・ブライド』(TBS系)でもコミカルな役だった。後者は連続ドラマ初主演となったが、オファーされたときは「自分にはまだ主演は早い、30代に入ってから挑戦したい」と一旦断ったという。これについて財前は後年、《結果的に挑戦してよかったのですが、その頃から、「早く一人前の役者になりたい」と、気が急いていたように思います》と顧みている(『日経ウーマン』2022年6月号)。当時は、結果を出そうと力が入りすぎ、いいお芝居ができなかったり、演技に自信が持てず、周りの先輩の真似をしてみてもしっくりこなかったりと、模索の時期だったようだ。それが《あるとき、ふと、「私は私でいい」と思える瞬間がありました。感覚や感性という自分にしかないものをもっと生かそう、と》気づいたという(同上)。
その後は、コメディのイメージがついたと思うと、それを壊すようにシリアスな役を選ぶようにするなど、バランスをとりながら活動を続けていく。なかでもドラマ『お水の花道~女30歳ガケップチ~』(1999年、フジテレビ系)で演じた主人公で元ナンバーワン・ホステスの明菜は当たり役で、2年後には続編も放送された。財前としても、このドラマでの自分の演技にもうすべてやり尽くしたと言えるくらい納得したという。

