第75期ALSOK杯王将戦七番勝負(主催:日本将棋連盟、特別協賛:ALSOK、特別協力:毎日新聞社・スポーツニッポン新聞社)の第2局が2026年1月24日、25日に京都府京都市伏見区「伏見稲荷大社」で行われた。
第1局から先後が入れ替わり、本局は藤井の先手。藤井が角換わりに誘導し、永瀬は早繰り銀を採用した。
永瀬が角換わり後手番で能動的に早繰り銀を指したのは、過去にはたった1局しかなく、2023年の第71期王座戦五番勝負の第1局のみ。明らかに対藤井専用に練ってきた作戦だ。(全2回の2回目/最初から読む)
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挑戦者の永瀬が牙をむく
途中までは2025年の第73期王座戦第2局(伊藤匠二冠対藤井)と同じ進行だったが、永瀬は細部で独自の工夫を凝らす。それは中盤の入口で現れた。
藤井が技巧的な手順で桂を攻めに使う態勢を整えると、永瀬は端歩を突き捨て、歩の垂らしで香をつり上げ、そして守りの金を中段へと力強く進出させる。思いきった手順で、玉が薄くなるためリスクは高い。第1局で見せた、「真剣を構え、牙をむく永瀬」がそこにいた。
1日目の夕刻、藤井が珍しく封じた。近年の2人の2日制対局では、そのほとんどを永瀬が封じてきた。第1局では封じ手まであと17分という時間で指したが、本局では38分も時間を使って自ら封じたのだ。今回の藤井には、いつもと違う「自ら流れを支配しようとする意志」が漂っていた。
最後の歩を垂らして決断よく攻める
翌日、私は朝7時の新幹線に乗って京都に向かい、車中で封じ手開封の生中継を見る。封じ手は歩の垂らし。後手の桂の活用を封じ、角を打たせない。藤井好みの一手だ。
雪で新幹線が遅れたが、午前9時50分頃には現地へ到着できた。伏見稲荷は観光客で大賑わいだ。雪がちらついていて風情はあるが、寒い。
早速、立会人の福崎文吾九段に挨拶する。すでに端で2歩損していたが、封じ手開封から65分後、後手は最後の歩を端に垂らした。福崎が「これは対局者しか指せない一手だなあ」と感心する。この歩を取られると3歩損だから、決断の攻めだ。
藤井が見せた“まさかの顔面受け”
まあ桂で取りますか、と福崎と話していると、藤井はなんと玉で取りにいった。これまた怖い手だ。いくら中段玉寄せにくしと言っても、敵の飛車に射程に入りそうで怖い。戦場に大将自ら飛び込む勇気ある受けだ。
それが最善なら、危険地帯へ踏み込むことも恐れない、藤井らしい「真理の追求」が形になったような一手だ。
「玉がバルコニーに上がったねえ。いつ降りるんやろ?」と福崎。対局室と盤上で緊迫した雰囲気と裏腹に、控室はベテランの飛ばすジョークに和んだ。




