文春オンライン

ボクシング山根会長と東京医科大は「コンプライアンス」で片付けられるのか?

文科省のネタが日本の医療崩壊のトリガーとならないように

2018/08/09

 本稿では東京医大の不正について論じようと思っておるのですが、前置きに老害解体ショー状態になっているスポーツ団体について触れないわけにはいきません。ボクシング団体の不祥事については、その方面を知る関係者やライターには総じて「ようやく問題に火がついたのか」と言われてしまうほど界隈では知られた話だったようで、ああいう組織が自浄能力を持つというのは大変なのだなというスポーツ団体あるあるに陥っていたそうです。私もボクシング方面は全く知りませんでしたので、とても新鮮でした。

老害各位には彼らなりに言い分も経緯もあるが

 すでに解決途上にある時事ネタを掘り返し続けるのはあまり好みではないのですが、それにしてもスポーツ団体の不祥事はこのところ尽きません。角界不祥事に始まり、プロ野球の賭博問題、日本大学アメフト部、女子レスリング、さらには今回のボクシングと、スポーツ団体で立て続けに不祥事が続いておりまして、なかなかどれも見どころがあるなあと思うわけであります。

日本ボクシング連盟・山根会長は辞任した ©AFLO

 おおむね共通しているのは「組織と老害」の問題であって、かつて名選手だった人や、その界隈で選手や関係者から広く人望を集めていたはずの人が、そのスポーツ団体の仕切り役になり、だんだん世間の常識一般から隔絶していって、権力を持つと今度はそれを保つためにいろんなことをするようになる、という顛末です。もちろん、問題とされた老害各位には彼らなりに言い分も経緯もあり、また本当は正当なことも含んでいるのに、周囲やメディアが「批判ありき」で彼らを見るために、記者会見に追い込まれてしどろもどろになったり、ささやき女将状態になったり、自宅の前にマスコミに張り込まれてマイクを突きつけられ狼狽し、怒り、怒鳴り、人間の本来の姿を晒すことになってしまうのであります。

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 残念ですが、人間誰しも緊張感のある状態でなければ簡単に老害になるし、組織も外部からのチェックが然るべき形で働かなければ腐っていかざるを得ないものなのでしょう。何だこんな書類面倒くせえなあとか、コンプライアンス講習なんて中身知ってるよ何で俺がいちいちこんなものに出席しなければならないんだよと思うようなことでも、毎年一回二回真面目に出席したり、書類を書き続けることで保たれる清廉さというものはあるのかもしれません。