私立大学の「あれ、こいつ大丈夫かな?」というような奴
スポーツ団体は「そのトップがなぜそのような行動をとったのか」というのが分かりやすい反面、表題の東京医科大学の問題は「単に文科省の偉い人が、出来がアレな倅を医者にしたくて点数に下駄をはかせて配慮させたネタ」として終わらせてはいけない方向に進展してきました。中でも、まだ報道では確定事項とはされないものの「東京医科大学は多重浪人生や女性受験生に対して不利な点をつけさせた」という、入学する学生の選別における不公正・不公平の話になり、女性差別じゃないのって話にまでなっております。
話の根本で言うならば、私立大学の医学部は赤本にすら明記されるほど「女性が入りづらい」学部であって、これが男女差別なのだというのはもっともな意見として、もともとは私立大学は純粋な試験での点数で入学者を決めなければならないという決まりはない、というのもまた事実としてあります。有名私立では、大学に限らず、小学校や中学校ですら有力者や学校OBなどの子弟への入学への配慮をされるのもまた一般的であって、寄附金を多く納めてくれる家庭の子弟を優先的に入学させることは一般的でした。
私の母校である慶應義塾でも、医学部はさておき附属の中学校、高校では「あれ、こいつ大丈夫かな?」というような奴がクラスメートになることも多く、だいたいが小学校(慶應義塾幼稚舎)あがりで、高校なのに1年から留年して、逸材になると一盃口(1年1年2年2年3年3年)を役として完成させる強者もおり、学校の食堂では20歳の誕生日が盛大に祝われ、参列した教師と酒を酌み交わす姿が多数の高校生に目撃されるという生ける伝説まで残していました。
「女性医師は男性医師程には戦力にならない」が前提という問題
翻って、医学部は日本の理系教育の事実上のトップであり、いわゆる医師資格を取っておけば将来は安泰と思い込む保護者の間でどんどん祀り上げられて、成績の良い子弟子女はこぞって医学部を目指すようになりました。一方で、医師というのは過酷な職業で、現在の日本の医療水準や、いつ行っても数時間程度の待ち時間できちんと診察してもらえるというのは、ひとえに殺人的な現場でも献身的に従事してくれる医師、歯科医師、看護師、薬剤師などの医療関係者の努力の賜物と言えます。
しかるに、これらの医師たちは重労働で、ブラック企業というレベルで当直があったり、連続10時間を超える手術があったりします。こういう世界で女性が医師になるということには、キャリアの面でも医療サービスをどれだけ充足させるのかという面でも、医学部だけでなく医療界隈全体が「女性医師は男性医師程には戦力にならない」という前提で政策議論が積み重ねられてきたという状況があるわけです。