「いくら掃除しても臭いが消えない」

 新居の壁の奥から“女性6人の遺体”が見つかり、すべてが一変した。戦後ロンドンで妻子殺害の罪を着せられ、25歳で絞首刑に処された青年。

 のちにイギリス死刑制度廃止の引き金となる、史上最悪の冤罪事件はなぜ起きたのか? 本当の犯人はどこへ消えたのか? 新刊『世界で起きた恐怖の冤罪ミステリー35』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/つづきを読む

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さらに見つかった「赤ん坊の遺体」

 さらに捜索を続けると、ドアの裏の木の下で赤ん坊の遺体を発見。言うまでもなく、それは彼女の娘、ジェラルディンで、2人が殺され死体を遺棄されたことは明白だった。

 ただ、このとき警察は敷地内に他の遺体があることを知らなかった。もっと徹底した捜索を行っていれば、エヴァンスに嫌疑がかからなかったにもかかわらず、2遺体が見つかったことで満足した。それは捜査の怠慢と言うほかない。

 警察は、ジェラルディンの首にネクタイが巻かれていたことから、彼女が絞殺されたものと断定する。さらに後の調べで、ベリルも唇と右目の上に殴られたような痣があり、ロープのようなもので首を絞められたことが直接の死因と判明。2人とも遺体発見時、死後2週間が経過していたこともわかった。

 遺体解剖では、ベリルが何かの薬を飲んだ形跡は見つからなかった。ただ、膣内に痣があり性的暴行を疑ってもおかしくなかったが、解剖医がレイプの痕跡を調べなかったことで、警察はエヴァンスの供述が嘘だと断定。取り調べで厳しく追及する。しかし、エヴァンスにとっても娘が殺されていたことなど寝耳に水の話。もちろん、妻を殺すはずもない。妻子から剥ぎ取られた衣服を見せられても呆然とするよりなかった。