性的逸脱は「性的コンプレックスが原因」?

 フロイトは、幼児は多形倒錯的(性的嗜好が一定していない状態)であり、そのような幼児期性欲のさまざまな衝動が成人期までに統合、解消されることなく残存したものが各種の性的逸脱であるとみた。その後の精神分析学者も、人間関係のゆがみに基づく性的なコンプレックスをその原因とする例が多い。確かに、盗撮を含め犯罪行為に至る場合については、そうした側面もあるだろう。

 しかし、犯罪に至らない単なる性的指向の多様性(性的逸脱というマイナス評価を受けているものをも含めて)について、はたしてそのようにいえるのだろうか。

 アメリカで私が話したある犯罪学者は、こう語っていた。「表立っては許容されない性的な行為や関係を夢想する人々は、特に男性では、いくらでもいます。しかし、彼らのほとんどは、それを実現しようとはしませんし、犯罪も犯しません。私は、この相違こそが決定的なものだと思っています」

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 私の考えもこれに近い。

「母と交わる夢を見ることがある」と言われ…

 上記に関連して、「禁忌に関する興味、願望」の例を挙げれば、ポルノサイトのインターネット検索について、男性では近親相姦関係がかなりあるほか、女装した男、ペニスのある女性等についてのものなども目立ち、女性では、女性に対する暴力を含んだ性的行為関連の検索が男性の2倍もあるという(セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ著、酒井泰介訳『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性』〔光文社未来ライブラリー〕 )。後者については、怖い物見たさという側面も大きいかもしれない。しかし、女性がそうした検索を男性以上に行っているというのは、やはり驚きである。

 この点については、私自身も、知人の法律家から、「実は、母と交わる夢を見ることがあるんだ」と言われて、「ふううん」と複雑な感情を抱いた記憶がある。しかし、前記の書物にみるビッグデータ分析の結果からすると、彼の夢想(彼の場合には、「夢」そのものだが)も、特に珍しいものではないのかもしれない。