なぜ「すき家」だけがラーメンに手を出さないのか

 だいたい、吉野家HDのラーメン事業強化は、コメ騒動とは関係なくかなり以前から進められていた。2016年にせたが屋、2019年にウィズリンク、2024年にラーメン店向け食材開発の宝産業、2025年には京都のラーメンチェーン「キラメキノトリ」を展開するキラメキノ未来と……といった形で、今に始まった話では全くない。

吉野家HDは、以前からラーメンへのシフトを進めてきた(同社決算資料より)

 両社ともに牛丼以外の新業態開発が必要な会社であることは、昔から言われていた。牛丼に続く第2、第3の柱がないと成長限界が来る、もしくは不測の事態(コロナや狂牛病のような災厄)におけるリスク回避が困難、ということである。

 さて、ここで吉野家HDと松屋フーズHDにゼンショーHDも加えて、牛丼大手の事業別売上構成を並べてみよう。 

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牛丼御三家を展開するグループ親企業の売り上げ構成比(それぞれ直近の通期決算より筆者作成、単位:億円)

 これを見ると一目瞭然で、既に売上1兆円超の外食最大手となったゼンショーHDは分散が進んでいて、すき家、はま寿司、ファストフード、レストランの4つにきれいに分かれている。しかし、吉野家HDは国内の牛丼事業が3分の2、海外の牛丼事業も合わせると8割を依存している。松屋フーズHDも同じように8割ほどを牛丼に依存しており、事業の分散はあまり進んでいないことがわかる。

 いまのところ、牛丼最大手で外食最大手でもあるゼンショーHDが、吉野家HD、松屋フーズHDのようにラーメン場外戦に参戦するそぶりを見せない理由はここにある。つまり、すでにポートフォリオの分散に成功しているからだ。