レタッチャーとしてのデビュー

 2020年4月、SNSで交流をしていたとある風俗嬢がLINEグループの参加を募っていたため、参加した。新型コロナウイルスが日本に上陸し、風俗業界も壊滅的なダメージを受ける矢先の時期だ。グループ内で、現役風俗嬢の一人から「撮影スタジオに時間制限があって、多くの写真が撮れない」「写真のストックが無くてどうしよう」といった声が聞こえてきた。瑞月は「写真の雰囲気を変えれば使えるんじゃないの?」と提案した。

「そんなこと、できるの?」

「背景の色を変えるとか、やり方はいろいろあるよ」

ADVERTISEMENT

 そんな仲間内の会話が盛り上がる。何しろこの時期、風俗嬢も暇を持て余していた。

「できるならお願いしたい。瑞月さん、試しにやってみて」

 そんなやり取りの末、瑞月は風俗嬢たちの写真データを送ってもらい、レタッチを始めた。この時、すでに瑞月は、絵画の技術、フォトショップの加工技術、さまざまな技法を知っていた。

 さらに、本格的にレタッチの勉強を行い、風俗嬢たちから借りた写真を用いて一日中練習をした。

 その後、グループ内の風俗嬢の助けも借り、徐々にSNSなどでその評判が広がり、翌2021年にはレタッチャーを名乗るようになった。

 瑞月のレタッチはいわゆるパネマジと呼ばれる修整とは異なり、被写体の良いところをより良く見せるというものであって、「別人級に見せる」ものではない。さまざまな技法、ストリップで培った女性の造形美と、イラスト制作で養ったカラー&ライトの知識と技術が武器で、被写体の「最適解」を導き出そうとするものだ。

レタッチ前の写真 モデル/嶋崎あいか、撮影/夜凪、在籍店名/渋谷EOS
レタッチ後の写真 モデル/嶋崎あいか、撮影/夜凪、在籍店名/渋谷EOS

「ナイトワークにおけるパネルの役割はまず多くの人の目を引き、興味を持ってもらい、一度会ってみたいと思わせることにある。パネル写真は店で言えば、看板であり、外観である。どんなにおいしい料理を出す店でも、外観が悪く目を引かないお店に、多くの人は進んで足を向けてくれない。だからこそ、最初の一歩になる間口を広げるため、多くの人がその女性に興味を持ってもらう魔法をかけるのが、レタッチャーの仕事だと思う。プラスを生かしマイナスを減らして、1人ひとりの良さを写真のなかにちりばめていく。だからこそ被写体を生かし、違和感のない仕上がりを目指すことが大事だ」

 と、瑞月は語る。そして最後に自らの軌跡をこう振り返る。

「さまざまな人のご縁で今の仕事に就くようになった。何度も私を救ってくれた風俗業界と、今がんばっている女性たちを“私の魔法”で応援していきたい」

最初から記事を読む 「僕はこの仕事が天職だと思っています」「これ以上何を望むわけではないけど…」月80人の“素人”を撮影する現役風俗カメラマンが明かす“宣材写真撮影”現場のリアル

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。