「10億円とかの不動産を買っている香港人とか台湾人っていうのは、投資目的で買っているの?」

 ナナミちゃんは即座に、「実需だよ」と答えた。不動産業界では、「実需」は「投資」の反対語で、自己使用を意味する。自宅用とも言い替えられる。

 とはいえ香港人の場合は、自ら住むわけではなく、セカンドハウスとして持つケースがほとんどで、日本に来たときの拠点、という感覚だ。もちろん、所有している間に価格が上がり、将来、売却益が出るという想定はしている。

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画像はイメージ ©JIKOMAN/イメージマート

「ってか、そんな高い物件買って、賃貸にも出さずに遊ばせてるってわけ?」

「別に現金で買ってるからいいって感じだよ」

 24歳女子はこともなげに言った。そして「いつ何があっても逃げられる場所を、自分の国以外に作りたいんだってさ」。

 私は、富裕層の資産管理を得意とする税理士の本郷尚氏が言ったある言葉を思い出した。

「彼らはいつでも資金を移動できるように準備しています。投資じゃないんです。資産を逃がす『逃資』です」

 以来、私の頭の中を香港人の「東京買い」が占めるようになった。そして「いつか香港に行って『逃資』の現場を見てやろう」と思い続けてきた。

次の記事に続く 「相続税がかからない」ニッポンの不動産を買い漁る“中国人”たち…取材歴20年の不動産ジャーナリストが「今の東京は30年前の香港と同じ」と思うワケ