都心部の物件が急激に値上がりしている。20年以上にわたり不動産業界を取材してきた吉松こころ氏は「今ほど家が買えなくなったことを痛切に感じることはない」と語る。そんな中、10億円を超えるような高額物件を購入しているのは、主に香港や中国の富裕層だ。

 ここでは吉松氏の『強欲不動産 令和バブルの熱源に迫る』(文春新書)より一部を抜粋してお届けする。「もはや日本のマンションを買うのは当然のこと」と考えている中国の人々が、大阪を「日本の中国」と言う理由とは。そして、吉松氏が実際に足を運んで目にした、大阪に出来上がりつつある“中国経済圏”の実態とは……。(全5回の5回目/最初から読む

大阪・道頓堀 ©AFLO

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大阪は「日本の中国」

 2025年11月23日~25日の3日間、私は上海にいた。

 同月の7日に、高市早苗首相が、衆院予算委員会で、台湾有事が「存立危機事態」になり得るという趣旨の答弁をしたことで中国側の反発を呼んでいる最中だった。

 上海では不動産コンサルタントのドンという名の男性に会っていた。40代後半くらいで、身長は190センチ近くある大柄な体型をしていた。流暢な日本語を話し、大学生の時、千葉に留学した経験があると言った。ドン氏は、現地に住む日系の住宅設備メーカーの日本人駐在員が紹介してくれた。

 彼は、上海と日本の歴史を学ぶのが好きだと言い、1862年に、幕府の使節団として51人の日本人が上海に来たこと、その中には松下村塾の逸材と言われた高杉晋作がいたことなどをニコニコしながら話した。

 高杉が見た上海は、1840年から42年のアヘン戦争でイギリスに敗れた清王朝が、西洋列強による植民地支配に苦しんだ時代と重なる。西洋の脅威を目の当たりにした高杉は、上海から帰国してすぐ、奇兵隊を創設したと言われている。

 彼がそんなエピソードと共にした話が忘れられない。

 ドン氏はこう言った。

「中国人は、もはや日本のマンションを買う買わない、という次元の話はしていません。買うのは当然のことで、わざわざ議論するようなことではないからです。それよりも買った後の子供の教育、病院や主治医をどうするかという話をしています」

 つまり日本の不動産を購入することは、すっかり当たり前になっているというのだ。