東京医科大学が、男子学生の数を確保する目的で、入試で女子受験生に一律減点措置を講じていた一件は、一大学の不祥事にとどまらず、日本の医学界全体を巻き込む大きな問題に発展している。
明らかな女性蔑視であって許されることではない、という意見が大半を占める一方、医療という仕事の特殊性や、日本の医療界のおかれた実情を考えるとやむを得ないことなのではないか、とする擁護派の声も少なからずある。
そこで、実際に臨床の最前線で活躍する医師に、匿名を条件に、今回の問題についての正直な意見を聞いてみた。
「あなたが男性だったら正規合格でした」
都内の大学病院の内科系診療科に勤務する女性医師Aさん(40代)は、自身の受験生時代、すでに「東京医大は女子が受かりにくい」と言われていたことから、同大を受けなかったという。
「あまり成績の良くなかった友人(女子)が、『親が東京医大のOBなので、1次さえ通過できれば受かるんだ』と言っていて、実際に受かったんです。他の医学部はすべて不合格だったようですが……」
そんなAさんは、別の私学の医学部に補欠合格する。その時こう言われたことを覚えている。
「これは人数の問題なんです。あなたが男性だったら補欠ではなく正規合格でした」
ただ、当時のAさんはその説明に違和感を持つこともなく、「そんなものなのか……」と納得していたという。
地方の国立大学でも……
「東京医大と同様のことは、私大に限らず国公立でも行われていると思う」と語るのは、首都圏の大規模民間病院の外科系診療科に勤務する女性医師Bさん(30代)。ある地方の国立大学医学部の話をしてくれた。
「1次試験に受かっても、東京から受験している女子受験生は2次試験で落とされる、という話を聞いていました。地元出身者なら卒業後も大学に残ってくれるけれど、東京や大都市出身者だと、卒業と同時に帰ってしまうから。あと、首都圏の別の私立医大では、100人の合格者の中で女子の枠は5人だけ――と言われていました。事実、当時その大学は本当に女子が少ないことで有名でした」
ちなみにその私立大学は、現在でこそ女性の合格者の割合が3割台まで上昇しているようだが、それでも東京医大のそれと大差ない。