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女性医師ならではのメリットも少なくない

 一方、医療には、女性医師ならではの優位性もある。

「昨年、ハーバード大学から出たデータによると、内科の病院勤務医において、男性医師よりも女性医師が担当した患者のほうが死亡率が低かった――という結果が出ました。女性医師のほうがガイドラインなどの客観的データを、より忠実に診療に適用しているからではないか、という考察がされています」(前出のCさん)

「手先が器用な人が多いので、手術手技は安定している。また男性に比べて几帳面な人が多いので、病棟管理などでの手抜きが少ない」(同・Bさん)

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「乳腺外科や産婦人科、女性の泌尿器疾患など、デリケートな部分の診療では、女性医師のほうが受診しやすい、というメリットがあります。また、看護師や薬剤師、技師などのスタッフとのコミュニケーションの面でも、女性医師のほうが有利だと感じることが多い」(同・Dさん)

 男性医師だけ、女性医師だけに偏るのではなく、バランスよく、適材適所に配置されるのが理想なのだが……。

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「当直などの面倒な仕事から逃げる人がいるのは事実」

 今回話を聞いた医師全員に、「今回の東京医大の問題についてどう思うか」という同じ質問をした。東京医大の行為を完全に肯定する医師はゼロだったが、「絶対に許されない」という意見を、「好ましいことではないがやむを得ない事情もある」という回答が上回った。

「医師の総数は決まっている中、女性医師が増えることで実働している医師の数は減り、結果として現場にいる医師の負担が増えて、疲弊を招いていく」(Cさん)

「女性であることを振りかざして、当直などの面倒な仕事から逃げる人がいるのは事実」(Aさん)

 女性医師自身の口からこうした意見が出る背景には、「医療崩壊」が目前に迫っていることを肌で感じている病院勤務医の苦悩があるようだ。

外科部門はすでに人手不足が深刻化している

 この点について、男性医師にも意見を求めた。

本田五郎医師

 東京都立駒込病院外科部長の本田五郎医師が、「男性医師のほとんどが同じ意見だと思うので」と、あえて実名で語ってくれた。

「心臓外科、肝胆膵外科、食道外科などの仕事がきつい外科部門は、男性医師も含めて若手から敬遠され、すでに人手不足が深刻化している。女性医師が増えることで、このような診療科別医師数の偏在に拍車がかかる可能性がある。実際に体力的な不安を考えてこうした部門を敬遠する女性医師は決して少なくない」

 多くの女性医師も指摘するように、女性が臨床医、特に外科系の診療科に進むと、結婚、妊娠、出産というライフイベントのたびに、周囲にしわ寄せが行くのは事実だ。

「外科という部門は、外科医同士の熾烈な競争があり、それに勝ち抜くための努力をし、高い技術を身に付けた者が勝ち残ることで周囲が納得する世界。そのためには、事の善し悪しは別として、自分の生活を犠牲にして頑張る姿勢が求められる。妊娠や出産がそうした犠牲の対象外として特別扱いされる昨今の風潮の中で、女性医師の休暇や早退によって他の医師たちの負担が大きくなるだけでなく、彼女らの態度によっては熾烈な競争に不公平感が生じているのも事実です」(本田医師)