しかし、私の暮らすキーウの街中を見回してみると、果たしてロシアの目論見通りとなっているとは言えない風景も広がっている。確かに、夜間に氷点下20度に達する日があるが、他方でそのような日が毎日続くわけでもない。数日間極寒が続いた後には、気温が0度まで上がる日もある。エネルギーシステムは著しく破壊されているのだが、同時にウクライナの電気作業員の方々は、日々昼夜を問わず復旧作業を続けており、電力状況の改善は毎日肌で感じられる。

 例えば、ロシアの大規模空撃があった日の朝は、キーウではしばしば水も電気も暖房も止まるのだが、水の供給は概ね24時間以内には再開され、送電時間や暖房の提供も日を追うごとに改善される。攻撃から1週間も経過すれば、これらの状況は相当安定する(ただし、大体そのぐらいの時にロシアが次の大規模攻撃を仕掛けてくるのだが)。

ウクライナ市民は極寒の日々を凌ぐ術を会得している

 さらには、ロシアが停電と寒さでウクライナの町々への攻撃を始めたのは3年前。大半のウクライナ市民は、それに対抗するためのノウハウをすでに身に付けている。

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 街中の飲食店や商店は、自前で購入した発電機を毎日稼働させて営業を続けているし、個々の市民もポータブル電源やモバイルバッテリーを購入し、それでスマホやノートパソコンを充電したり、電飾で室内の明かりを確保したりしている。また、屋内でコートを着たり、屋内で登山用寝袋で寝たり、ペットボトルにお湯を入れて簡易湯たんぽを作ったりして、極寒の日々を凌ぐ術も会得している。

停電中の我が家 ©平野高志

 この極寒のキーウで、今回もう1つ紹介したいのがウクライナ・ラーメンである。ウクライナにラーメンが登場したのは約10年前だが、新しい食べ物を好み、スープ料理全般に馴染みのあるキーウっ子の間で、ラーメンは急速に人気を博すこととなった。

 ウクライナ・ラーメンは日本のラーメンとは異なる幾つかの特徴を持つ。まず、ウクライナの人々は、概して日本の人々ほど塩分の高い食べ物を好まないため、ウクライナ・ラーメンは日本のものより(いわゆる「あっさりラーメン」より)もしばしば塩味がずっと薄い。しかし、色々な食材で出汁をとる文化はあるため、塩分が薄くても、コクを十分に感じられるスープが出てくる。