北朝鮮のミサイル問題や台湾有事など、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。しかし、当の日本の防衛中枢は「世界基準」から見れば穴だらけで、笑いものにまでなっているという。いったいどういうことなのか。
軍事アナリストの小川和久氏による『総理、国防も安全も穴だらけ! 国民を守れない国ニッポン』(扶桑社)の一部を抜粋し、背筋が凍る防衛省の実態を紹介する。
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シールドがなかった防衛省
形式に流れる日本の危機管理はサイバー面も例外ではない。象徴的と思われるので、日本の安全を任務とする防衛省・自衛隊のケースを紹介しておこう。
2008年7月28日、私は防衛省・自衛隊で相次いだ事故や汚職など不祥事を考えるヒアリングに、作家の杉山隆男氏とともに招かれた。
ヒアリングは、東京・市ヶ谷の防衛省A棟11階の第1省議室で行われた。私の正面には石破茂防衛大臣、右手に増田好平防衛事務次官、左手に江渡聡徳防衛副大臣が座り、私の左に斎藤隆統合幕僚長、折木良一陸上幕僚長、赤星慶治海上幕僚長、田母神俊雄航空幕僚長、右に五百旗頭眞防衛大学校長、後ろに外薗健一朗情報本部長がいた。
会合の冒頭、私はポケットから携帯電話を取り出し、「これは何ですか?」と問いかけた。
意表を衝かれたのか、石破防衛大臣はじめ全員が驚きの表情を浮かべた。私は語気を強めた。
「部外者の私が、防衛省の中枢に携帯電話の持ち込みを許されるというのは、いったいどういうことでしょうか。防衛省・自衛隊は、民間企業でも当たり前の常識すら、持ち合わせていないことになる。危機管理の基本が、全くなっていない。私は、携帯を預けさせられることを前提に、携帯をもうひとつカバンの中に忍ばせてきたのだが、そのチェックすらされなかった。驚きを通り越して、呆れてしまう」
私の携帯にはアンテナマークが3本立っていた。私は続けた。
「この部屋には電磁波のシールドがない。外部から簡単に盗聴できるだけではない。私が携帯を通話状態にしておけば、防衛大臣や統合幕僚長、陸海空の幕僚長の会話が外部に漏れるということだ。この緊張感のなさは、いったい何なのですか。防衛省・自衛隊が世界の常識である『平時の戦争( peacetime war )』を戦っていないことの表れと言わざるを得ない」
