ヒアリングのあと、石破大臣は私に「まったく情けない。恥ずかしい話だ」と言ったが、それから17年経って石破氏が首相に就任した後も、首相執務室にも防衛大臣室にも電磁シールドが施されていない。
この2008年当時でも、先進国の駐日大使館では、パブリックスペースから内部に入るとき、携帯は電源を切ったことを確認した上で、中が見える鍵付きのロッカーに預ける決まりになっていた。民間でも先端技術を扱うメーカーでは、個人の携帯は持ち込み禁止で、会社が配布した携帯しか使えないところも少なくなかった。だが、2008年夏の防衛省・自衛隊は、そのレベルにも達していなかった。
防衛省・自衛隊の名誉のために付記しておくと、私が指摘した直後、パブリックスペース以外に立ち入るときは携帯電話の電源を切って預ける措置が取られた。電磁波のシールドも施されたとのことだが、それから17年後の首相執務室と防衛大臣室の様子を見るとマユにツバをつけたくなる。
アメリカに20年、韓国にも10年の後れ
私がサイバー面の危機管理に関わるようになったのは、2003年に政府に提出した報告書『米国におけるネットワーク・セキュリティの現状』がきっかけだった。
この報告書を公開することはできないが、本書では報告書の大まかな内容を明らかにし、日本のネットワーク・セキュリティの課題を考えていきたい。報告書で指摘した状況が2025年段階でも改善されず、国民を危険にさらしているからである。
報告書をまとめたきっかけは、2002年夏、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の安全性が手つかずになっていたことだった。私は住基ネットをベースに電子政府実現に向けてのセキュリティを確立するため、調査委員会を立ち上げるべきだと政府に提案、委員に就任するとともにアメリカの実情についてのリサーチを委託された。
とにかく、国際水準を前提に眺めたとき、(1)住基ネットを推進する側も、反対する側も、どのような社会を実現していくかの前提条件抜きに議論しており、(2)電子政府に至るネットワーク社会への取り組みは、原子力エネルギーを扱うのと同様の危機意識が必要なのに、「失敗すれば国を傾けかねない」という認識が官民ともに希薄、という印象を抱かざるを得なかった。
