2006年2月、海上自衛隊の護衛艦勤務の隊員が所有するパソコンから大量の内部情報が流出した。しかし、軍事アナリスト・小川和久氏によると、海自の幹部は「たいした秘密ではない」とたかを括っていたという。
外国の情報機関からすれば『海上自衛隊攻略ハンドブック』を手に入れられたとも言える、恐るべき情報流出の裏側には何があったのか。小川氏による『総理、国防も安全も穴だらけ! 国民を守れない国ニッポン』(扶桑社)の一部を抜粋。大臣による有識者ヒアリングに招かれた小川氏が内局の不祥事を問いただした際のエピソードを紹介する。
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ネット上に流出した重大情報
私は続けた。そんなことだから2006年の情報流出事件の後、海上自衛隊は1年以上にわたって無防備な状態に置かれたのだ。無防備と言われても出席者の誰もが理解できなかった様子で、互いに顔を寄せて囁き合っていた。
分からないだろう、だから無防備状態が放置されたのだよ、と私は心の中で呟いた。海上自衛隊の130隻の艦艇は敵のパソコン1台で指揮通信系統を攪乱される有り様だったのだ。それを、当の海上自衛隊が自覚していないとは、困ったものだと思った。
私が取り上げたのは2006年2月に発覚したファイル交換ソフト・ウイニーを介した事件で、護衛艦あさゆきの通信室勤務の海曹長のPCの中身がネット上にさらされた一件である。
それをキャッチしたのは毎日新聞大阪本社のサイバー取材班で、大阪から横浜の私の自宅までやってきてパソコンにダウンロードされた情報の真贋を確認するよう求めた。流出情報はフロッピーディスクにして290枚分。ネット上に出ている情報は紛れもなく海上自衛隊内部のものだった。深刻だったのは、同盟国アメリカにとって望ましくない情報がかなり流出したこと、今一つは、自衛隊の能力や手の内が明かされてしまったことだった。
たとえば北朝鮮による核実験の後、読売新聞が日本海における海上自衛隊の船舶検査の担当区域について地図まで入れた詳しい記事を一面トップのスクープ扱いで報じたが、その船舶検査に関する情報も、すでにこの事件でネット上に流出していたのだ。
そればかりか、海上自衛隊が敵国の潜水艦をどのくらいの距離で探知でき、どのように追跡、攻撃するかという訓練資料まで流出していた。
