一人になれるのはトイレだけ…刑務所のような寮生活
——休日は外出できるんですか?
松田 制服着用、門限ありという制限付きで外出できます。横須賀市小原台にある防大の別名は“小原台刑務所”で、外出できると「シャバの空気はおいしい」と言い合いました。
上級生と同室なので、1人になれる時間はトイレくらい。自由はありません。ちなみに、学生が逃げ出すこともあるのですが、自衛隊では隊員が逃げ出すことを「脱柵」と表現します。
——上級生と同室だとずっと気が抜けませんね。
松田 そうなんです。基本的にみんな尊敬できる素敵な上級生でしたが、気は張っていました。
ベッドメイキングは「落とした硬貨が跳ね上がるほどのハリにしろ」という、ホテル並みの水準を求められます。アイロンがけでは、シワや二重線をつけることは許されません。あるネット記事に「防大はアイロンがけと掃除のプロを養成する施設でもある」と書かれていましたが、真実だと思います。
「命を捨てる覚悟」を突き付けられる
——授業のほかに訓練もあるとのことですが、どのような内容なのでしょうか。
松田 貸与された「64式小銃」を手に走り回ります。小銃といえど、銃身99センチ、重量4.3キロ。女子の体力では、ずっしりとこたえる重さです。銃の分解と結合を覚え、どんな場所、どんな状況下でも組み立てられるようにします。ちなみに、いまやっと陸上要員には「89式小銃」が貸与されるようになりました。
精神論としては、「お前たちは国のために命を捨てる存在だ」と言われ、水筒に入っている水についても「水筒の水は部下への末期の水だ。飲んではいけない」と指導を受けたことをよく覚えています。もちろん、実際には脱水症状を起こさない程度に飲んでいたのですが。
——10代という若さで「命を捨てる覚悟」を突き付けられるのは壮絶ですね。すぐに順応できるものでしょうか。
松田 書籍の取材でもその点は聞きましたが、それまで平和な日本で安穏と生きてきたわけで、「すぐに」というのは難しいかもしれません。ふとした瞬間に自分の状況を客観視してしまい、「なにやってるんだろう、自分……」と、我に返ってしまったと話す女性はたくさんいました。
私自身も、1学年時の訓練のテストで、「敵の歩哨(スパイ)を見つけた場合、どうするのが望ましいか?」と聞かれ、「生きたまま捕獲するのが最も望ましいが、逃げられそうな場合には刺殺、できなければ射殺する」という回答を書いた時、「私はいま、何を書いているんだ?」と、ふと考え込んでしまったことがあります。
「覚悟」というのは、防大生になった瞬間に決まるものではありません。少しずつ時間をかけて、着実に育んでいくものなのです。
——軍隊ではありませんが、軍隊として扱われる組織ですものね。

