東京湾8キロを4時間かけて泳ぐ
松田 普段から時間的・精神的に余裕のある生活を送っているようでは、有事の際に反射的に動くことなんてできるわけがない。一度、「1秒で戦闘機が何メートル進むと思っているんだ!」と怒鳴られた時は、確かにと膝を打ちました。
ただし、いまは時代の流れから厳しすぎる教育がなくなり「時間的・精神的にゆとりがある」と話す防大生も多く、逆説的に「こんなにゆとりを持った生活でいいんだろうか」と悩む真面目な防大生もいると聞きます。
——訓練はどれくらいの頻度で行うんですか。
松田 週に1回です。それに加えて年に複数回まとまった訓練期間があり、たとえば、1学年では「遠泳」などが行われますね。
——どこで行うのですか。
松田 東京湾ですね。8キロを4時間超かけて泳ぎます。東京湾はめちゃくちゃ汚くて、水着を洗った水が緑色に染まるほど。休憩時には船の上から乾パンを投げられるんですが、海水に浸かり塩気を増した乾パンは思いのほか美味しかったです(笑)。
——すごく抵抗を感じます(笑)。
松田 鯉みたいですよね(笑)。ある女子学生に遠泳のことを取材したら、溺れかけたときに教官が飛び込んできてくれて、「危うく惚れかけた」と語っていました。
顔にドーランを塗る陸自コース
——陸海空の進路はいつ頃決まるのでしょうか。
松田 2学年進級時に決まりますが、これが運命の分かれ道となります。人気は圧倒的に空で、次いで海、陸の順。陸に行きたいと志望して叶えられないことは少ないです。ただ、バランスを考えなければならないので、優秀な者が必ず航空に行けるというわけでもありません。
陸は顔にドーランを塗り、銃を手にひたすら匍匐前進やランニング。海は舟を漕いだり国際法を覚えたり、まとまった訓練期間中には船での生活が待っています。空は、防大には滑走路がないので、普段は座学が中心となります。
——松田さんはなぜ陸上自衛隊に進まれたんですか?
松田 もともと陸上部に所属していたこともあり、なんとなく「陸上」という言葉に親和性があり、「私は地に足を着けて生きていくんだ」と思っていました。
防大で実際の陸上要員の姿を見て、「陸上要員は過酷すぎる。航空要員のほうが楽そう……」と揺らぎましたが、とくに空への憧れがあるわけでもなかったので、そのまま陸上要員になりました。


